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BIOTOP PEOPLE

No.39 TOMOKO ARIMA

TOMOKO ARIMA
BIOTOP PEOPLE No.39 TOMOKO ARIMA
9/25に発売する『ё BIOTOP Lingerie』(ヨー ビオトープ ランジェリー)の秋冬新作コレクション。そこで「L'ANGELIQUE(ランジェリーク)」別注アイテムが発表される。何度も打ち合わせと試作を重ねてきたというランジェリークディレクター有馬智子さんとレディスバイヤー曽根英理菜の2人。ランジェリークのランジェリーはもちろん、有馬さんという人自体に惹かれるという曽根が、さらに深くお話を伺った。

曽根 有馬さんと初めてお会いしたのは、2020年1月のパリの展示会だと思います。

有馬 1年半くらいなんですね。なんだかもっと長く感じます。

曽根 パリでお会いさせて頂いた時は、ランジェリーのリサーチをしている段階でした。有馬さんが携わっていた「クロエ」のときから華奢で絶妙な色合い、他にはないデザインがとても好きで、多くはないですけれど愛用していました。ランジェリークもとても素敵で気になっていたので、お会いした時に勇気を出して話しかけさせていただいたんです。

有馬 そんな…。とっても自然でしたよ。お話をして、ランジェリーをとても好きな方なんだなぁと嬉しかったのを覚えています。

曽根 ファッションとランジェリーは近いようで遠い存在でもあるので、お知り合いになる機会は意外と少ないんですよね。だからとても緊張したんですが、有馬さんご自身がとても自然体でおしゃれだったので。ブランドはもちろん人柄にも興味を持ち、どうしてもお話したいと強く思ったので。

有馬 ランジェリー、ファッション、どちらも身につけるものなので、近い存在のはず。けれどランジェリーって、文化なのか、セクシャルな雰囲気も含まれたりすることもあり、ファッションに比べてなかなか難しい業界なんですよね。

曽根 分かる気がします。有馬さんはランジェリー業界は長いですか?

有馬 15年くらいになります。

「有馬さんとは何時間でも話せてしまう。お付き合いがとても長いわけではないのに、不思議な感覚です」と言う。

曽根 ランジェリーの前は、アパレルにいらっしゃったんですよね?

有馬 そうです。海外へ輸出するブランドにいたので、その頃から自然と日本に限らず世界をマーケットとして捉えていた気がします。カテゴリーや国などはあまり考えず自分ができることをしてきたかもしれない。 ヨーロッパでは日本ぽいブランドだと言われ、日本ではヨーロッパぽいブランドだと言われます(笑)とはいえ、今はヨーロッパにも全然行けていませんが…

曽根 そうなんですよね。私も同じです。やっぱり実際に足を運んだり、色んな人と出会うことで感じたことなどからエネルギーをもらうことは大きいですから。情報が自分のまわりだけに固まっていくということは、クリエイション的には難しいと思いますし。

有馬 ポジティブでいたいんだけれど、驚くようなニュースが日々あって、自分の中に葛藤や困惑みたいなものがすごくある気がします。

曽根 ちょうどこのコロナ時期に連絡を取らせて頂いていて、メールのちょっとした言葉にとても元気をもらいました。選ぶ言葉が違うんですよね。 決して長い文章ではないんですけど、とても響く言葉があり、節々に世界を見てらっしゃるというか視野の広さを感じるんです。ファッションや世界をふまえながら、人として魅力的な方だと思いました。ランジェリークはもちろんですが、有馬さんとお仕事したいと強く思ったんです。

有馬 嬉しいです。いい意味で、効率的に有機的に仕事ができる人はとても嬉しいし、気持ちよくご一緒させて頂いています。何の仕事をしていても、社会の一員だから。社会に対してどういうことを自分がやっていくか、そこを大事にしたいと思っているんです。

曽根 先ほどのお話で出ましたが、ランジェリーとファッションの境目ですが少しだけなくなってきている気がします。

有馬 それはёだからじゃないかなぁ。すごく自由だな、いいなって思っています。

曽根 そう言って頂けてすごく嬉しいです。ランジェリーの知識がまだまだ足りないので、そこはもっと学んでいきたいと思っています。

有馬 知識は必要だし財産。けれど使い方によっては窮屈になることもあるんです。だから、今の好奇心と好きだという気持ちで自由につくることはとてもいいなって思います。

9/25に発売する『ё BIOTOP Lingerie』(ヨー ビオトープ ランジェリー)と「L’ANGELIQUE(ランジェリーク)」の別注アイテム。とても気持ちの良い肌触りと美しいデザインに、2人揃って大満足の様子。

有馬 ランジェリーって肌に1番近い部分ですし、身体に沿ったものを選ぶじゃないですか。そこがやっぱり洋服とは違うかなぁと。美しさはもちろん、快適さ、清潔であるということ。そこは忙しい日常生活を快適に過ごすために必要だと思っています。下着は心地よいものであるべきという制限の中でどうデザインするか、だから少し難しいんですよね。

曽根 ランジェリーは、手でとった時よりも実際につけたときの見た目を気にして選んだ方がいいよ、とおっしゃったじゃないですか。それってファッション側からすると、どうしても見た目を重視してしまったりもするし、けれどぱっと見で気に入らないと手に取ってもらえないとも思うし、どこに落とし所をもっていくのかは考えました。けれど有馬さんのその一言で、腑に落ちてシンプルに考えられるようになったんです。

有馬 パッと見た印象とつけたときの美しさ、どちらも叶えてくれるものももちろんあるんです。ランジェリーは、お尻や胸などがそこに入った時に、とても美しくあるといいなとは常に思っています。

曽根 それは人に見せる前提ではなく、自分の満足度の話ですよね。わかります。美しいランジェリーをつけたり、それが身体を美しく見せてくれたりするだけで、その日の気分が変わりますから。

有馬 いつも同じ洋服だったら、同じ下着でもいいかもしれない。けれど、例えば私は色々なタイプのお洋服が着たいと思う方だと思うんです。そうすると、そのファッションにマッチする下着が実はそれぞれあって、見えなくてもファッションによって下着が変わってきますよね。

曽根 見えるか、見えないか、ファッションとランジェリーのそこの違いは大きいかもしれないですね。その分、「今日そんな下着つけてるんだね、どこのブランド?」なんて話題にはのぼらないですし。

有馬 そうですよね。そして、ファッションとの違いは、トレンドという制限がランジェリーは少ないこと。それはありがたいなって思っています。

曽根 たしかに。目まぐるしく変化するトレンドがあまり関係しないということは、自由だなと思いました。それに、肌に直接つけるということから、ファッションよりランジェリーは更に品質がとても重要だということも作って改めて学びました。

ランジェリーは人に見せるという視点で選ぶのではなく、自分が気持ちがいいか、着た時に身体が美しいか、心惹かれるデザインなのか、そこが重要。その視点は2人共通の想い。

有馬 長く使っていただきたいから、品質ってとても大事だなと思っているんです。きちんと品質に責任を持つようにしてます。レースが繊細だから可愛いと思っても、ドライだと日常には難しくなっていきますし。美しさと品質、どちらも必要ですよね。

曽根 そうですよね。ヘルシーな下着が増えてきていますし、私もそういうものを着る日もあります。けれどやっぱり華奢なレースの“THEランジェリー”というものは、やっぱりずっと好き。とても華奢で、これどうやって着るんだ?!というような下着も、見せるもの前提としてではなく自分のために着ています。

有馬 私もそうです。アンティークのものが好きなので、長く残るものって素敵だなとクリエイションとして思っています。 レースという存在そのものが素敵なんですけどね。

曽根 ランジェリークには毎シーズンテーマがあると思うのですが、どうやって考えてらっしゃいますか?

有馬 テーマというか、目標を持ちたいと思っていて。そこに向かうことで、いい方向に向かっていけるんじゃないか、と。こういうことを大事にしようという意識があると、少し目線が変わったりしますよね。実は、ちょっと大きな想いみたいなものを毎シーズ潜めているんです。それをテーマとして落とし込んでいるという感じです。前シーズンのテーマはアマゾンでした。 「木」という本があって、それを読み始めたばかりなんですけど、緑って綺麗だなとか、気持ちがいいなとか、そういうシンプルな気持ちから、小さなムーブメントが始まればいいとなと思っています。

曽根 やはり…。裏に秘めた想いはたくさんあるんだろうな、と感じていました。

有馬 そういう日々感じたことやパズル化していくのがとても好き。収集癖ってありますよね、そんな感じなのかもしれない。パズルを構成していきながら、そこに私の個人的な思いも入れていくという感覚です。お説教したいとか伝えたいというわけでもなく、感じてもらえたらいいなという感じですね。

曽根 ランジェリー業界は盛り上がってきているんじゃないかなと感じいるのですが、どう思われますか?

有馬 ёなどのおかげだと思います。日本は似たようなものが溢れていると思うんです。あるものはあるものでいいので、また似たようなものを作らなくていいはず。なるべく違うものがいいし、なるべくいいものがいい。シンプルな話です。ランジェリーもお洋服のように、せめて色々なものが選べる環境になったらいいのにとは思っています。ヨーロッパのデパートでランジェリーを見ていると、たくさんのブランドが置いてあり、その中から好きなものを選びたいなと思えるような売り場づくりになってはいると感じます。ブランドを名指しで買いに行くというより、自分で選んでいく楽しさを自然と感じられる場所。けれどたくさんブランドの種類が増えれば良くなっていく、とも思わないんです。作る側と選ぶ側それぞれの視野が広がっていく必要があるんです。選ぶ側の意識も変わっていったらいいなと思っています。だから、ёみたいなブランドがあると、そういう意識を変えるきっかけになるんじゃないかと思っているので、とても嬉しいです。

曽根 ёをやっていく上で有馬さんとの出会いはとても大きかったです。今回の別注アイテムは、ランジェリーとファッション、その間のものを作れたような気がするので、とても嬉しいんです。肌に1番近いものとファッションの間の存在ってとても難しいけれど、とても必要だと思うので。そして、華奢に見えるって大事ですよね。そこにもこだわり、満足しています。華奢なアイテムなので、レイヤードするのがまたとても楽しくて。自由なアイテムなんだなと、実際にスタイリングしてみて感じました。

有馬 5回位サンプル出ししましたよね。いつも最低3回位はやりますけど、今回は5回! 結果、すごく良いものができたと思っています。

曽根 今後ランジェリークさんが目指すものがあれば、最後にお聞きしたいです。

有馬 色々思うことはありますが、まず、続けること。 せっかくできたものは、長くじっくり大切にしたいなと。ランジェリークはずっと続いてくれたらいいなと思っています。

「ランジェリーについて学んでいる途中の私に、たくさんの知識や気付きをくれる有馬さん。これからも学ばせてもらいたいことがたくさんあります」という曽根に、恥ずかしそうに笑う有馬さん。

Photo/ Daehyun Im Composition / Maki Kakimoto

有馬智子
Tomoko Arima

ファッションブランドのデザイナー、パタンナーを経験後、2008年に「ランジェリーク・アンジェリーク」の立ち上げに参画。
2010年に 同ブランドの名称が「ランジェリーク」に変更されると同時にクリエイティブディレクターに就任

Interview with

曽根 英理菜
Erina Sone

BIOTOPレディスバイヤー

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