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BIOTOP PEOPLE

No.40 SHOTA TAMADA

SHOTA TAMADA
BIOTOP PEOPLE No.40 SHOTA TAMADA
「TTTMSW」と書いて「ティー」。
「MSW=モダンストリートウェア」を名前に入れているように
東京発のストリートブランドでありながら、モダンで上質なウェアを提案。
「ジャンルレス、ジェンダーレス、ボーダーレス」をコンセプトにしているように
自由な発想で、ファッションの枠を超えて時代の空気を発信する。
今回はTTTMSWの服作りのことや、これからのこと、BIOTOPとコラボレーション
して作ったシューズのことなどを、デザイナー玉田翔太さんに聞いた。

文化服装学院在学中にブランドを立ち上げた玉田翔太さん。プライベートでは油絵を描いたり、料理をしたり、花を生けたりするという。「植物が家にたくさんあって、その成長を見るのが楽しいです」。家には友人が描いたアートが10点以上飾ってある。

迫村 よくみんなで食事行ったり飲んだりはしているけど、二人きりで仕事の話をするのは初めてかも。玉ちゃんは昔から服を作りたいと思っていたの?

玉田 学生時代は、親が就職に有利だからと野球かアメフトをすすめるので、一応アメフトをやっていたんですが、それほど興味はなくて。やっぱり服が好きだったから文化服装学院に進んだんです。

迫村 いつから服が好きだった?

玉田 小学生の頃からですね。両親とも洋服関係だったので自然と。最初はディーゼルが好きになって。それからヒステリックグラマーとか着ていました。高校に入ってからはコム デ ギャルソン。

迫村 いきなりディーゼルから!? やっぱり世代だなー。玉ちゃんはすごく友だちが多いイメージだけど、文化服装学院のときの友だち?

玉田 いや、入学してすぐに1年くらい休学しまして。思っていたのと違う!って(笑)。結局また戻って卒業したんですが。休学している間は焼き鳥屋や焼肉屋でバイトしながら、クラブとかで遊んでいましたね。そうこうしているうちに気づいたら友だちが増えていたって感じです。

迫村 学生のときにブランドを始めたんだよね?

玉田 そうです。1年の夏休みに、知り合いがラフォーレ原宿でポップアップやるから何か出さない?て声かけてくれて、そのときに作ったものを友だちが欲しいと言ってくれて、それがスタートです。ブランド名も最初から今と同じですね。

迫村 そういえばブランド名はどういう意味なの?

玉田 最初の「T」は僕の頭文字で、あと2つの「T」は上下に重ねると「+」マークになるから、「自分+何か」。自分の考えとか価値観だけで成立するブランドにはなりたくないと思ったので、いろいろなものが合わさってひとつになれたらいいなという意味です。それに「MODERN STREET WEAR」をつけました。

「玉ちゃんはそれなりにお酒を飲むけれど、ある一定のところでぴたっと止める。“もういいです”って。酔っ払っているわけではなくバランスを取っている感じ。真面目だなと思う」(迫村)「酔いたいというより、その雰囲気とかみんなで集まるのが好きなんです」(玉田)

迫村 僕が初めて玉ちゃんに会ったのは3〜4年前くらいで、山口亮くん(「ALLEGE」「Ernie Palo」デザイナー)の紹介だった。ニコニコしていていい子だなって、一瞬亮くんと兄弟かと思った(笑)。展示会もずっと見ているけど、最初の頃と比べてかなり変わってきている気がする。自分では最近変化を感じる?

玉田 楽しいと思うことが変わってきているんです。昔はクラブへ行ってわちゃわちゃ遊ぶのが楽しかったんですけど、最近はひとりで考えることが多くなりましたね。興味が内へ内へと向いてきて、世界や他人のことよりも、日本や自分自身のことが気になる。そうしているうちに、ガチで何かを作りたいというマインドになってきました。もっと何かやりたい!っていう。

迫村 作っている服も、昔はクリエイティブで勝負!ていう感じだったけど、最近は生地とか縫製にもすごくこだわっているように感じる。ほかの人が作る服もいろいろ見てる?

玉田 はい、コレクションも全部見ますし、すぐに誰って言えないけれど、いろいろな人から影響受けていると思いますね。コム デ ギャルソンがサルエルパンツを出したときは、うわー、こんな形のパンツあるんだーって衝撃を受けましたね。

迫村 玉ちゃんの場合、ファッションだけじゃなく音楽や舞台、デザインなど、ジャンルに関係なく交友関係が広いよね。同世代の面白い表現者たちと同じ空気を吸っているんだなと思う。そういう仲間たちからも刺激を受けたりする?

玉田 そうですね。やっていることは違ってもマインドとか考え方は同じで、どの業界にいても感じていることは通じていたりする。そういう話をよくしますね。あー、わかるわー、とか言って。

迫村 玉ちゃんの周りには、藤井風くんとかもそうだけど、いいマインドの人がたくさんいて、見ていていいなと思う。ただ旬とかいうだけではなく、若くて中身もあるかっこいい人たちと常につながっているから、ブランドのポジションとしてもすごくいい。90年代のアンダーカバーとかがそういう存在だったよね。ブランドというよりもひとつのカルチャーになっていて、みんなその空気を感じたくて服を買う。いい服を作る人はたくさんいるけれど、仲間やカルチャーを築きながらブランドを発展させていけるというのはすごい才能。

玉田 最近は外で会わず、家に集まって長時間話し込んだりすることが増えました。外で飲むにしても、酔いたいというよりはみんなで集まって飲む雰囲気が好き。究極的にはお酒とかなくても大丈夫です。それは僕らの世代には共通しているかもしれないですね。あんまり何かを欲していないというか。

迫村 それは確かに感じるね。無気力とかではなく、ある意味すごく洗練されていると思う。だから年も離れているのに友だちになれたのかなという気もする。ぐいぐい来るタイプだったら、僕はしんどいと思うんで(笑)。バランスがいいし、上品だよね。そんな玉ちゃんから見て、BIOTOPってどんなイメージ?

玉田 大人のイメージです(笑)。ほかにはないショップだなといつも思いますね。ファッションのほかに食だったり植物だったり、ここまでいいものをセレクトしてトータルで提案しているショップはないと思っています。上質な服を見ることができるし、こんなデザインがあるんだと勉強になる。気づきがありますね。

迫村 玉ちゃんには大人の友だちも多いよね。

玉田 そうですね。このあいだも、藤井フミヤさんがオープンしたギャラリーに遊びに行ったんですが、先輩がたくさんいて楽しかったです。大人ってこういう話するんだなと感心して聞いていました。そのギャラリーもすごく豪華で、NIGOさんとかジョニオ(高橋盾)さんとか永井博さんとかレジェンドの作品が並んでいました。何十年もものを作っていたら、なかなか気持ちがついていかないときって絶対あると思うんですが、それでも作り続けるすごさみたいなものを感じました。

2021-22AWコレクションより。
https://www.instagram.com/ttt_msw/?hl=ja

迫村 気持ちがついていかないことってある?

玉田 あります、あります!ぜんぜんやりたくない!みたいなことありますけど、上の世代の人たちは、それを何回も乗り越えてきているので尊敬します。ビジネスとして続けていくことはある程度できるような気がするんですが、クリエイティブな気持ちを維持していくのってけっこう大変なことだと思っていて、その両立は難しいなと思う。僕よりも年下の世代は、やりたいことよりまずビジネスみたいなところがあって堅実。好きなことを仕事にするというよりは、仕事をしてから好きなことを見つけたいと考えているような。そうなると強烈なものは生まれにくいんじゃないかと思う。

迫村 クリエイティブのインスピレーションはどこから生まれるの? どうやって服のアイデアを考える?

玉田 毎シーズン写真フォルダを作って、ふだん友だちと遊んだり食事したりしながら気になったもの、テーブルの質感だったり、お皿だったり、植物だったり、色だったり…といったものを撮影して、そのフォルダに入れておくんです。いざ作るぞというときにはそのフォルダを見て、自分の今のムードを感じて切り取っていく。ふだんのインスピレーションのスケッチを見直して、いきなりiPadにラフを描いていくという感じですね。生地探しとデザインは平行してやります。

迫村 製作チームはどんな雰囲気?

玉田 年上が多いですね。生産管理の人とは二人三脚で、友だちというわけではないけれどそれに近い感覚で、最近気に入ったブランドとか、面白かった本とか、面白かった記事はこれ読んでってラインで送ったりして、少しでも近づけるようになんでも共有するようにしています。ひとりで完結できればもちろんラクなんですが、そうもいかないのでできるだけ自分のことをわかってもらうために、僕が興味を持ったことは逐一共有してクリエーションをすり合わせていきますね。

迫村 なるほど。そうしていると、回数重ねるごとに精度は高くなっていきそう。

玉田 ステッチとか仕様とか細かいことなんですけど、そういうところまでわかってくれるとうれしいです。だんだん言わなくても気づいてくれるくらいの関係になってきている。

迫村 ものづくりは、そういうことの積み重ねだよね。さて、ついにTTTMSWとBIOTOPがコラボしたSOLOVAIR(ソロヴェアー)のシューズが発売になるね。たまたまBIOTOP3階のLIKEで一緒に飲んで帰るとき、ショーウィンドウに飾ってあったこのブランドのシューズを見て、一緒に作りたいねという話になった。もともとイギリスで英国軍とか警察とかのシューズもたくさん作っているような工場だからしっかりした技術のある伝統的なブランド。今回のコラボではどこにこだわったの?

玉田 チェルシーブーツはポニーがポイントで、普通は後ろ側だけについているタグを前にもつけました。ブランド名はエンボスでさりげなく。もう1足はどうしても作りたかったローファーです。配色は10秒で決まりましたね。白と緑と茶色という気分だったので、これしかない!と直感で。ジェンダーレスなのでサイズは豊富です。このシューズは品があってとても気に入っています。シューズを作るのは初めてだったから、記念すべき1足! 周りの友だちもみんな履いてくれそうな絵が見えているんで、それも楽しみ。

左:「SOLOVAIR(ソロヴェアー)」は、イギリスのノーザンプトン州にあるNPS SHOES LTD.で生産されているブランド。名前の由来が「SOLE-OF AIR」というだけあって、空気を踏んでいるかのようなソール=エアークッションソールが特徴。ディーラーブーツ¥46,200(税込)。サイズは4〜10
右:伝統的なハンドメイドのクオリティとフレッシュな配色のコラボレーション。
ローファー¥41,800(税込)。サイズは4〜10

迫村 玉ちゃんの将来の目標を聞かせてくれる?

玉田 来年1月に初めてパリで展示会をする予定ですが、いつかパリでショーをやりたいですね。大きな夢としてはメゾンのデザイナーになること。ルイ・ヴィトンとかやってみたい! 誰もが経験できないことをやってみたいんです。

迫村 そうやって口に出すことが、実現の第一歩だよ。玉ちゃんの服は個性があるから海外でも受けると思う。同時にTTTMSWはビジネスとしてもきちんと成立しているからすごい。そういうことも自分で手がけているの?

玉田 はい。最近ビジネスも面白くなってきて、年々増える後輩たちに示しがつくようお金をちゃんと稼ぐことも意識しています。ビジネスでもがんばりたいんですよね。いつかSacaiくらいになりたい。

迫村 おお、それは大きな目標だね。

玉田 そういう夢を持つ人がもっと増えればいいのにって思うんです。同世代はみんなわりとこじんまりしちゃって、ふつうの生活ができればいいみたいな。上の世代の人たちからもっと刺激を受けて、もっと多くのことを目指してほしい。やっぱり年上の人たち見ていると面白いなって思います。裏原宿の歴史とか見ていると、すごい人たちがみんなで一緒になって盛り上げていた。天才がたくさんいて、その頃の作品は今見ても面白いしかっこいいし。ミックスカルチャーを最初にやった人たちですよね。

迫村 藤原ヒロシさんとかね。僕も本当に影響受けたよ。ジャンルなんてなんだっていいじゃんという感じで、エルメスにレッドウィング合わせていいことも知った。ヴァージルだって、あの時代の原宿に影響受けているからね。今の若い世代がジャンルも時代も超えて影響受けたら、日本のファッションが活性化されて面白くなりそうだね。

Photo/Im Daehyun Composition/Ayumi Machida

玉田翔太
Shota Tamada

1993年兵庫県生まれ。2013年にTTTMSWをスタートさせる。2018年3月、アマゾン・ファッションウィーク東京のAT TOKYO枠で初ランウェイショーを開催。OKAMOTO’Sなどアーティストの衣装製作や、俳優の菅田将暉を主演にしたブランドイメージムービーを製作したり、ジャンルにとらわれない幅広い活動が注目されている。

Interview with

BIOTOPディレクター
迫村 岳

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