BIOTOP PEOPLE

No.41 TAKAYUKI FUJII nonnative デザイナー

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No.41 TAKAYUKI FUJII nonnative デザイナー

東京を代表するブランドで、機能素材をファッションの領域に取り入れた
リアルクローズが人気のノンネイティブ。
デザイナーの藤井隆行さんがリメイクしたレッド・ウィングのブーツが
BIOTOPにて限定販売されることになった。
同時に4月からはノンネイティブの服も取り扱いがスタートする。
今回は、ファッションからライフスタイルまでこだわりを持つ藤井さんに、
レッド・ウィングに対する思い入れや、ノンネイティブの服が
生まれる背景などについてお話をうかがった。

昨年、藤井さんがレッド・ウィングで監修したブーツはグレーだったが、今回はベージュ。絶妙な厚さのソールがマニア心をくすぐる。

迫村 藤井さんとは共通の知り合いが多いこともあって、知り合ったのは7〜8年くらい前でしょうか。食事したり飲みに行ったりはしても一緒にお仕事をさせていただく機会がなかなかなかったので、今回藤井さんがカスタムされたレッド・ウィングを期間限定で販売することになったり、ノンネイティブの服も取り扱いさせていただくことになったり、とてもうれしいです。最初に藤井さんにお会いした頃、実はちょっと怖いイメージがあったんですよね。

藤井 不愛想だからですかね?(笑)

迫村 いや、やはり先輩なので恐れ多いというか。でも葉山で開催された熊谷隆志さんの写真展に行ったときにたまたまお会いして。ちょうど藤井さんも葉山に引っ越しされた頃で、なんだか印象が変わってやさしい表情になっていました。葉山という町はこんなにも人を変えるのかと。(笑)

藤井 いや、朝だったからさわやかだったんでしょう。(笑)僕は迫村くんが関西弁だからなんとなく親近感を感じていました。あと、たぶんアメカジが好きだろうなという気がして、しかもジーパンにネルシャツみたいなど真ん中のアメカジではなく、進化形みたいなものを探しているタイプじゃないかと勝手に思ったんです。僕と同じアメカジの捉え方をしているんじゃないかと。

迫村 たしかに藤井さんの好きなテイストは僕とリンクする部分がたくさんあります。今回は「いかにもレッド・ウィングを扱っていそうな店ではないところで新しいスタイル提案をしたい」と言われて納得でした。

藤井 昨年もレッド・ウィングで限定ブーツを監修させていただいたのですが、また何か新しい切り口でできないかと相談されたんです。迫村くんがレッド・ウィング好きなのも知っていたし、BIOTOPならジーパンを合わせるようなスタイルとは違う、新鮮な提案をしてもらえるんじゃないかと考えたんです。「あ、そういう履き方もあるんだ」という。

迫村 個人的にも、最近またレッド・ウィングが気になって履くようになり、藤井さんがレッド・ウィングで監修したブーツを見ていいなと思ったのですが、あっというまに完売。がっかりしていたところに一緒にやりませんかと声をかけていただいたのですごくうれしかったですね。取り扱いたいと思ってもなかなかできないので。

藤井 今回の靴はデッドストックをアレンジしたものなんです。ソールを変えるのはすごくたいへんな作業なのですが、その技術がある職人を探して、いったん全部はずしてから少し厚めなソールに付け替えて、色も変えたリメイクです。

迫村 このソールの厚さが絶妙ですね。極端に厚いと今っぽくなり過ぎてしまいますが、この厚さは往年のレッド・ウィング好きな人にも伝わるさじ加減。なんというか……、すごいマニアだなと感心しました。さすがわかっている人の仕事だなと。(笑)

藤井 すごく厚くするのもありなんですが、どこが違うの?って聞かれるくらいの程度にとどめておくのがいい。そこをわかっていただけてうれしいです。自分がずっと履いてきているので、こうだったらいいなと思うものにしました。レッド・ウィングの工場は今コロナで生産が止まっていて、別注はおろか新作もない。でもそんななか何かやりたい、だったら在庫でなんとかできないかという発想です。ある意味サステナブルでもありますよね。

4月よりBIOTOP白金台にてノンネイティブの取り扱いがスタート。「BIOTOPに来るたびに、なぜここにうちの服がないんだろう」と思っていたという藤井さん。「うちのお客様は当然ノンネイティブを知っている人たちなので、どんな反応か楽しみ」と迫村。

迫村 常々ノンネイティブの靴にもこだわりを感じています。徹底してスエードを使っているのがいい。色出しとか毛足のこだわりとかとても好きです。スエード以外の靴を作ることはあるのですか?

藤井 ありますよ。あるけど、何か藤井さんらしいことをやってくださいと言われたら、結局スエードでベージュになる。(笑)昨年監修したものはグレーでしたが、あれはレッド・ウィングのショップで扱うものだったので、赤茶系の靴が多く並ぶところで、グレーをクローズアップできたら面白いと思ったんです。

迫村 藤井さんがスエードを好きな理由は何ですか? 服を好きになった頃からずっとスエード履いているんですか?

藤井 たぶん最初にスエードのレッド・ウィングを買ったときからずっと好きですね。表革はいつもきれいに磨いておかないといけないけれど、スエードは多少汚れても不潔に見えないという印象があったんです。だから高校生の頃に初めて買ったビルケンシュトックもスエードでしたね。ヴィンテージデニムに一番合うのがスエードだと勝手に思い込んでいた頃からまったく成長していない。(笑)どんなスタイルにもすっとなじんでくれるところが好きなんでしょうね。

迫村 “ファースト レッド・ウィング”は何歳でしたか?

藤井 高校2年かな。当時はたしか2万円代で、お年玉を握りしめて梅田まで行って、赤茶のアイリッシュセッターを買いました。ヴィンテージスエットとリーバイス501にはまずそれだと思ったから。

迫村 けっこう早いですね。僕は大学に入学する前に、天王寺のアウトドアショップでスエードのプレーントゥを買いましたね。

藤井 そのあと1995年かな、大学を受験する頃だったけれど、渋谷のHMVの1階が公開スタジオになっていて、そこに藤原ヒロシさんの番組を見に行ったんです。そうしたらヒロシさんがリーバイス505にスエードのレッド・ウィングを合わせていて、「なんだ、あれ!?」と衝撃を受けて。ちょうど向かいにレッド・ウィングのショップがあったので、そのまま行って即買いしたのが最初のベージュのスエードです。

迫村 僕も同じ頃に、雑誌でヒロシさんが履いているのを見て買った記憶が!

藤井 ヒロシさんが黒のモックトゥに白いソールをカスタムしたレッド・ウィングを履いて雑誌に出ていたでしょう? もう目からウロコ! この人天才だなと思った。すり減ってもいないソールをわざわざ、しかも別の色に替えるとは、なんて大胆な。(笑)

迫村 あのアプローチはその後いろいろな人に影響を与えたと思います。ある意味、別注の始まりかも。

藤井 こうじゃなきゃいけないという常識をすっ飛ばして、それを成立させてしまうのがヒロシさんのすごさだと思います。

迫村 でもその後、レッド・ウィングはあまりにも流行り過ぎてしばらく遠ざかっていた時期はあります。

藤井 僕も最近になって、またよく履くようになりましたね。でも価格も昔からあまり変わっていないし、いまだにアメリカ製だしやはりいいなあ。しかも今回は本社公認のリメイクですよ。

ラインマンとプレーントゥの2型×3パターン。特別なベージュのシューレースが付いている。デフォルトはそのモデルにおすすめのカラー。

迫村 僕も欲しいけれど、どれか一つに決められない……。(笑)ラインマンとプレーントゥの2型・3種類で6パターン。マニアは全種類欲しくなるのでは?

藤井 レッド・ウィングは足元が大きく見えるボリューム感がいいんですよね。全身のバランスが取りやすい。足が大きいと安心するのは、やっぱりガンダムが好きだったからかなあ。(笑)

迫村 藤井さんはノンネイティブの服をデザインするときに、靴のこともイメージしているんですか?

藤井 まず靴から考えますね。最初にサンプルをオーダーするのは間違いなく靴で、次にゴアテックスという順番ですね。他のブランドのルックブック見ていても、必ず靴をチェックするし、それが自分のところで作っているものではなくスタイリストの私物だったりするとがっかりします。

迫村 でも靴を作っていないブランドのほうが多いんじゃないですか? やはり服を作るのと靴を作るのは別の話なのでしょうか?

藤井 意外と難しいんです。僕も最初はけっこう苦労しましたね。ロットの問題もあるし、いろいろな知識が必要になる。うちはたまたまいい工場との出会いがありましたが、きちんとした知識がないと伝えられないし。2002年くらいから試行錯誤で続けてきて、あるときからイタリアで作るようになり、イタリア製のアメリカっぽい靴という定義ができました。僕はショップを見て回るのが好きなのですが、どこへ行ってもまず靴から見ますね。コロナ前は、しょっちゅう世界中の靴の工場を訪ねていました。

迫村 靴へのこだわりもすごいですが、ノンネイティブの服はテクニカル素材の使い方にもこだわりを感じます。さまざまな素材から、どうやってデザインをおこしていくんですか?

藤井 やはりまず生地をみて、これならジャケットがいいかなとか考えます。でも同じ生地でパンツを作るにしても、シーズンごとに違うデザインになりますね。そういう“気分”みたいなものをどう表現するかをとても考えます。何かで調べて……というよりは、いろいろなショップを回り、とにかくたくさんの服を見たり触ったり。いいなと思ったらどこがいいのか分析してみたり。メモをとったりはせず、ただ感じたものを自分の中に貯めこんでいくと、いい生地に出会ったときにぱっとひらめく。コロナ前は海外のショップや風景を見てインスピレーションをもらっていましたが、今は日本のいろいろなショップを見ることが多いです。20年もブランドに携わっているのでベースはできているのですが、やはり今の空気感をどう反映させていくか。今っぽさって何だろうということはいつも考えていますね。

迫村 ノンネイティブでよく使われているゴアテックスという素材ですが、扱っているブランドは少ないですよね? デザインするのが難しいんですか?

藤井 ゴアテックスは、昔は糸を染めていましたがそれだと汚染水が出てしまうので、今はペットボトルをリサイクルして作っているんです。ペットボトルを粒状にして着色するので、先に色を決めないといけないんです。だからかなり早い時期から準備が必要ですね。ゴアテックスはいい素材ですが、きちんと理解していないとライセンスがもらえないので扱えるブランドも少ないんです。うちはウエアのファブリックのほかに靴のライセンスも持っています。

4月よりノンネイティブのアイテムが店頭に並ぶ。

迫村 4月からBIOTOPでノンネイティブを置かせていただくことになりました。ずっとバイイングをしていて思うのは、クオリティの高い商品を出すブランドの顔ぶれはある程度決まっていて、たまにユニークなブランドが登場しても個性だけでは続かない。だから新進気鋭ばかりに飛びつかず、クオリティの確かなもの、個人的にも着たいと思える服をそろえているわけですが、そうしたラインナップの中に、ノンネイティブの服はすっとなじむんじゃないかという気がしているんです。うちのショップのスタッフたちは、コーディネートの感覚がいいので、僕があえてテーマを設けずに「いいな」と思ったものを買い付けると、あとはラックで上手に料理してくれるんですよ。たとえばジル サンダーやザ・ロウの隣にノンネイティブのパンツがぽんと置いてあっても、うちのお客様はそれを面白がってくれるんじゃないかと思っているんです。

藤井 メインになろうとはあまり思っていなくて、僕自身ドリス ヴァン ノッテンやメゾン マルジェラなども好きですが、そうした個性ある服にもうまく寄り添えたらいいなと思って作っていますね。全身ノンネイティブじゃなくていい。僕はつい全身のスタイリングを割り算で考えてしまうんですが、高いものは安く見せたいし、安いものは高く見せたい。昔どこかでユナイテッド・アローズの栗野宏文さんが「ヨーロッパの服はアメリカの服ではずせ、アメリカの服はヨーロッパの服で気取れ」とおっしゃっているのを読んだときすごく納得したのを覚えていますが、全身のバランスを取るときに役に立ってもらえたらうれしいですね。

迫村 アウターとかフリースとかアウトドアっぽいものが欲しかったので、そのあたりもピックアップさせていただきました。アウトドアといってもスポーツブランドのアイテムをいきなり置くのは何だか違う気がしたのですが、ノンネイティブならきっと違和感なくなじむはず。お客様がどう感じてくれるか、そしてノンネイティブとどんなアイテムをコーディネートして買ってくださるのか、今から楽しみです。

コロナを機に展示会や展開のサイクルを見直したという藤井さん。海外のコレクションスケジュールを基準にせず、その季節に必要なアイテムができるだけ長く店頭に置かれるよう、秋冬の秋を飛ばして冬スタートは9月末、春物は1月から展開するというサイクルに。

Photo / YOSUKE EJIMA Composition / AYUMI MACHIDA

藤井隆行
Takayuki Fujii

1976年奈良県生まれ。2001年より「ノンネイティブ」(nonnative)のデザイナーとして、着る人の個性を大切にしたリアルクローズを提案。ゴアテックスやポーラテックなどの機能素材をファッションに取り入れたスタイルが人気。インテリアやデザインにも造詣が深い。

Interview with

BIOTOPディレクター
迫村 岳

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