BIOTOP PEOPLE

No.35 RYUICHI SAKAMOTO

BIOTOP PEOPLE

No.35 RYUICHI SAKAMOTO

音楽家の坂本龍一さんが代表を務める「more trees」(モア・トゥリーズ)は、
森と人が共存する社会を目指して活動を続ける森林保全団体。

BIOTOPはオープン以来、
年間売り上げの1%を「more trees」に寄付することで活動支援を行なってきたが、
そのご縁から、今回は坂本龍一さんがBIOTOP PEOPLEに登場。
SDGsについての意見や、コロナ禍で考えたことなどを聞かせていただいた。

昨年末にNYから一時帰国。この日はBIOTOP3階の「LIKE」にて行われたトークショーに出演するためにBIOTOPを訪れて、このインタビューが実現した。

迫村 BIOTOPは自然や植物を大切に考えているので、more treesの活動にはとても共感するところが多く、オープンから10年間も支援活動に関わることができてとてもうれしく思っています。
買い物することで森林保全に貢献できるというのは、お客様にとってどこで買い物するかの基準になるのではないかと思います。

坂本 買い物というのは“投票”だと僕は思っているんです。似たようなものがいくつかあるとしたら、それぞれどこの会社が作ったもので、どこの国から、どれだけのカーボンマイレージをかけて自分の目の前にあるのか、今は簡単に調べられるわけです。イタリアの水もフランスの水も富士山の水も、ほぼ同じような値段で売っているのは何だかおかしいな、ということに買う側が気づいて調べればいろいろなことがわかる。その積み重ねが大事ですよね。皆がそういう意識になったら提供する側も変わらざるを得ない。だから買う人が納得できる魅力的なものを置いて、買ってもらって、それが社会貢献につながるというのはすばらしいことだと思うんです。

迫村 できるだけ魅力的なコンテンツを揃えて買い物を楽しんでいただくことで、more treesとの関係性が長く保てたらいいなと思っています。

坂本 ありがとうございます。

一般社団法人more treesは、加速する森林破壊と地球温暖化の危機的状況に対して行動を起こすために、坂本龍一さん、細野晴臣さん、高橋幸宏さん、中沢新一さん、桑原茂一さんの5名が発起人となって、100名以上の賛同人と共に設立された。

迫村 more treesは2008年にスタートしましたが、振り返ってみていかがですか?

坂本 こういう活動は、どれだけやってもゴールはなく、それでもやらないよりはマシだと思って続けています。でも“気づき”というか、何かしたいと思ってくださる方がどんどん増えてきているので、やってきたことは無駄ではなかったと信じています。たとえばスウェーデンの10代の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが一人で抗議し始めたことが世界中に広がって、いつしか何百万という若者が地球温暖化を止めようと行動を起こしたように。SDGsという言葉もずいぶんあちこちで聞かれるようになりましたよね。普通の人々が関心を示せば、国も企業もなんとかしなきゃというプレッシャーを感じるようになります。そうやって皆が気づいて声をあげていくことが大事なのだと思います。そうしているうちに首相が「2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする」と言わざるをえない空気になりました。やはりまずは皆が知ることが大事。そういう意味では少しはお役に立てているかなとも思います。

more treesのキーワードは「都市と森をつなぐ」。“シティランドマーク”をコンセプトに掲げるBIOTOPのコンセプトは「街と人をつなぐ」。「多くの共通点があり共感できるmore treesに、これからも活動支援を続けたい」(迫村)。

迫村 2020年は世界中がコロナ禍に見舞われて大変な年でしたが、その中で生活や考え方は何か変わりましたか?

坂本 僕はもともとライブをたくさんおこなうミュージシャンではなく、ほとんど家にこもってコツコツ曲を作っているので、生活自体は大きく変わってはいないですね。ただ考え方、世界観は、やはり大きく変わったように思います。だって世界規模で人々の動きが止まり、経済活動が抑え込まれる状況なんていうのは、歴史的にもめったにないことです。世界的に経済は停滞しているのに株価だけ上がっているという異常さが明るみに出て、資本主義は実世界とは違う原理で動いているということがわかったり。医療システムの問題も含めて、社会のさまざまなひずみやマイナス点が、まるでレントゲンで照射したように映し出されてしまいました。

迫村 いろいろな意味で考えさせられました。

坂本 家にいる時間が圧倒的に長くなって、あまり時間に追われなくなるとやはり世界観は変わると思うんですね。家族と一緒にいる時間、自分の趣味に没頭する時間、あるいは空をぼーっと見たり散歩したりする時間ができて、その時間の豊かさを感じた人が多いのではないでしょうか? だから世界中の人々が大きく変わるんじゃないかなと僕は期待しているんです。多少経済が減速してもいいじゃない、どっちが本当に幸福なの? って思っています。

迫村 たしかに自分自身を見つめ直す機会になりましたね。2021年はどんな1年になると思われますか?

坂本 せっかく貴重な時間を体験できたのだから、一過性のものとして終わらせるのではなく持続してほしいです。コロナが終息したあと、コロナ以前に戻るのが一番つまらない。せっかく味わった豊かな時間の過ごし方をキープしたまま、経済活動に戻るのが理想的ですよね。僕はNYでロックダウン中、いつもよりも鳥の声がよく聞こえると感じました。人間も車も少ないから、鳥たちも自由にのさばって鳴いていたんでしょう。同じように感じた人は多かったみたいです。そういう感覚を大事にしながら、経済活動を続けていけたらいいのですが。

迫村 東京でも緊急事態宣言のときは、空気がきれいでした。

坂本 アメリカもCO2排出量がここ30年で最も低くなったそうです。今まで地球温暖化についてずっと危機感を感じながらも歯止めがかからなかったのに、目に見えないウィルスひとつで減らすことができたのですから、なんだ、やればできるじゃないって思いましたよ。

迫村 コロナは厄介ですが、大きな“気づき”も与えてくれましたね。ところでコロナが終息したら、まず何をしたいですか?

坂本 友だちとレストランに行きたいです(笑)。のんびりとおいしいものが食べたいですね。NYは日本よりも厳しいので店内では飲食禁止なんです。だから日本に来るとけっこうあちこち密だし、レストランにも人が集まっているので、ちょっとドキドキしますね。

2020年12月7日に行われたBIOTOP10周年 オンライントークセッション「都市と森をつなぐ 街と人をつなぐ」。more trees代表の坂本龍一さんと事務局長の水谷伸吉さんが1時間にわたり、more treesの活動や環境問題についてお話いただいた。

Photo/Yosuke Ejima Composition/Ayumi Machida

坂本龍一

1952年東京生まれ。音楽家。1978年イエロー・マジック・オーケストラを結成。映画『戦場のメリークリスマス(1983年/大島渚監督)で英国アカデミー賞作曲賞、『ラストエンペラー』(1987年/ベルナルド・ベルトリッチ監督)でアカデミーオリジナル音楽作曲賞、ゴールデングローブ賞、グラミー賞、『シェルタリング・スカイ』(1990年/ベルナルド・ベルトルッチ監督)で二度目のゴールデングローブ賞を受賞。平和・環境問題についても積極的に活動し、2008年more treesを設立。

Interview with

迫村 岳
(BIOTOP ディレクター)

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