デザインのインスピレーションは、毎日の生活の中から見つけるそう。「今は自由に旅ができないけれど想像することはできるし、人との会話がヒントになったり、生地を見に行って何か思いついたり。普段の生活の中で気づいたことに従っていますね」
山口 初めてお会いしたのは2012年秋冬Allege.の展示会でしたよね。
山口 僕、けっこうしつこくお誘いの電話をしていましたからね(笑)。
山口 そうそう。あわてて追いかけましたもん。でも追いつけず、あとで送りましたけどね。
山口 コロナ前はよく飲みにもご一緒させていただいて、けっこう遅くまで話し込んでいましたよね。
山口 フォトグラファーだと池谷陸くんや野田祐一郎くんも紹介しましたけど、そのあと仕事に繋げて形にしてくれるのがうれしい。野田くんが撮影したBIOTOPのシーズンビジュアルが、福岡店に飾られているのを見た時は感動しましたね。
コロナ禍だが、今スタートすることに迷いはなかったという。「僕は今38歳ですが、人生プランでは38歳くらいで新しいブランドを始めて、40歳くらいでブランドが認知されたらいいなと思っていたので、いいタイミングで始められたと思います。人生プランだと、40代では東京と地方での二拠点生活が目標です」
山口 自分も、周りの親しい人たちも少しずつ年齢を重ねてきて、子どもも生まれたりして、Allege.とは違うブランドで今の自分が表現できたらいいなと思ったんです。もちろんがんばってひねり出すことには変わりないんですが、シルエットがどうとか技法的なところで大きく変えるわけではなく、もっと自然に、自分らしいものができたらいいなと。
「Allege.は固定ファンもいるしイメージも定着しているから、その期待にますます答えていってほしいし、Ernie Paloは新しいことに挑戦してAllege.とはまた違う内容の商品を生み出していってほしい」(迫村)。「ブランドイメージの差別化はしたいけれど、それを意識しすぎて自分らしさを失わないようにしたい」(山口さん)。
山口 そういったディテールをすごくフレッシュに感じて、やってみたらどうなるんだろう? と自分でも興味があったので、トライアルでエスニックなプリントや刺繍、レースを使ってみたんです。レースを使うのは初めてだったので、ぜひ注目していただきたいですね。あとシェルタックのシャツもおすすめです。
山口 それはないですね(笑)。
山口 ああ、そっちに近いですかね。もちろん生地を見て「これはこっちのブランドがいいな」と思ったりはします。そういった2ブランドの線引きは自分の中にあるんですが、基本的にはどちらかのブランドが終わってからもうひとつのブランドのことを考えるようにしています。行ったり来たりはしないですね。今はついついフレッシュなので新しいブランドのことを考えがちですが(笑)。
Ernie Paloの2021春夏コレクションより。右・デニムブルゾン¥43,000 左・リネンリブニット¥35,000
山口 まず「Allege.」が1ワードだから、こんどは2ワードにしたいと思ったんです。で、昔から「E」という文字がデザイン的にいいなと思っていて、ヨーロッパによくいる「Ethan(イーサン)」という名前が気になっていたので頭文字は「E」にしようと。そこから「Ernie」が浮かんだんです。で、「Palo」は、ジア・コッポラ監督の映画『パロアルト・ストーリー』から取りました。ソフィア・コッポラが好きなのでAllege.の最初の頃にはソフィアっぽい写真でルック撮ったりしていたのですが、だったらこんどはソフィアの姪のジア・コッポラに関係したものにしようと。イニシャルが「EP」になるから、アナログレコードっぽくていいなとも思ったり。これから「アーニー」って呼ばれるのか「パロ」って呼ばれるのかどっちなんだろう(笑)。
山口 最初はオブジェみたいなものがいいなと思っていて、代々木上原にあるレストランAELUの丸山智博さんに相談したんです。それで、一緒に考えているうちに、長野のSTUDIO PREPAさんと一緒に何か作れたら面白そうだねという事になりガラスのオブジェを作ってもらいました。今後も定期的にリリースできたらいいなと思っています。
山口 ブランドをいきなり大きく広げるよりも、目の届く範囲で丁寧に育てていきたいですね。取り扱ってくださるお店にきちんと足を運んでそのお店の方と話したいし、卸し先に依存しすぎずECなどで自分たちでもきちんと売る方法も考えていきたいし。ブランドを知ってもらって、好きになってもらって、みんなといい関係性を築いていけたらいいなと思います。
Ernie Paloの2021年春夏コレクションより。エスニック風のプリントや工夫されたディテールなど、山口さんが新たにトライした新鮮なアイテムに注目したい。
1982年福島県生まれ。Allege.、Ernie Paloデザイナー。2011年春夏、Allege.をスタート。2013年代々木上原のビストロMAISON CINQUANTECINQと共同プロジェクトレーベル「オリヴィエ(Olivier)」をスタートし、パリ在住のフォトグラファーOla Rindalによる「日常」と「食」をテーマとしたコンセプトブックを刊行。2014年からはAllege. FEMMEも展開。2021年春夏よりErnie Paloをスタート。
迫村 岳
(BIOTOP ディレクター)
BIOTOP PEOPLE
NO.36
RYO YAMAGUCHI
BIOTOP PEOPLE
NO.35
RYUICHI SAKAMOTO
BIOTOP PEOPLE
NO.34
CHRISTOPHE LEMAIRE, SARAH-LINH TRAN