BIOTOP PEOPLE

No.33 ROKH

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No.33 ROKH

2016年にブランドを設立し、2017年にファーストコレクション、 そして2018年にはLVMHプライズで特別賞を受賞。彗星のごとく現れ ファッショニスタたちの心をあっというまに掴んだブランド「ロック(ROKH)」。

デザイナーは、フィービー・ファイロと共にセリーヌで働いた経験を持つ韓国出身のロック・ファン氏。

初来日の際、白金台のBIOTOPに立ち寄ってくれたロック氏に、ブランドストーリー、秋冬コレクションのこと、そしてブランドの未来のヴィジョンなどを聞かせてもらった。

「ロックの秋冬はバックが大きく開いたコートや構築的なワンピースなどを買う予定」というバイヤーの曽根。ロックさんにおすすめアイテムを聞くと「全部」という答えだった。

曽根(以下S)今日はBIOTOPにお越しいただきありがとうございます。日本は初めてだそうですね。どんな印象ですか?

ROKH(以下R)昨日大盛りの天丼を食べたのですが、とてもおいしくてびっくりしました。お寿司やつけめんもおいしいし、とらやで食べたデザートも絶品。すぐに帰らなくちゃいけないのですが、またすぐに来なきゃ(笑)。BIOTOPはすごくすてきなショップですね。僕は植物が大好きなので、グリーンがたくさんあってとてもうれしいです。

S 日本で何かお買い物されましたか?

R 自分の物はあまり買えてないのですが、ペットショップで愛犬の服を買いましたよ。

S 「ロック」のサイトで初めてルック画像を見たとき、ルック画像というより映画のワンシーンを切り取ったかのように感じました。一着の服を紹介するだけでなく、そのビジュアルから何かのストーリーが始まるような印象を受けたんです。それでとても興味を持ちました。それ以来、「ロック」のビジュアルにはいつも注目しています。

R おっしゃる通り、「ロック」のビジュアルを見てシネマティックな体験をして欲しいと思っていて、少しフランス映画のようなアプローチをしています。美しい服を作るのはもちろん大切ですが、それをルックとしてプレゼンテーションするときには、着ているシーンが想像できるようにと心がけているんです。撮影もスタイリングも、ほぼ自分で手がけています。

S すごい!洋服を作って、自分で撮影もして。とても忙しいですね。

R 撮影、スタイリング、パターンも自分でやるし、フィッティングにも立会います。すべてのプロセスが好き過ぎて、どれかひとつなんて選べない(笑)。自分が作った服、自分が考えた世界観は、やはり自分で撮って伝えたいと思っています。それに僕にはとても力強いチームがいます。ファッション,キャスティングディレクター、スタイリストなど、みんな才能ある人たち。彼らの力も借りて、ブランドの世界観を表現しているんです。

写真は独学で学んだというロック・ファン氏。カメラや写真の作品も集めていて、スタジオにはコレクションが並ぶそう。

S ビジュアルに余韻があるように、お洋服にもとてもストーリー性があるように感じます。シンプルに見えて実はすごく奥が深い。構築的なパターンはすごく複雑なのですが、着ると完璧というのが新鮮でした。「ロック」に出会った頃はちょうど、今まで見たことないような服との出会いを求めていたときだったので、衝撃だったし、すーっと心に入ってきました。

R うれしいです。コンセプチュアルなだけではなく、着るときれいに見えるという要素も大切にしていて、ファッションだけじゃなくカルチャーも好きな人が気に入ってくれたらいいなと。とにかく着る人が心地よくなれるようにと思いながら、服作りをしています。

S 服を作るとき、どんな女性を思い描いているんですか? 以前「ロック・ウーマンを呼吸させるように服を作っている」というような記事を読んだことがあるのですが、“ロック・ウーマン”とは?

R ワーキングウーマンで、アートや服そのものに興味がある女性。「呼吸させるように」というのは、仕事のときだけじゃなく普段も着られて、着ている人が自分の一部のように感じてくれる着心地の良さがあるということです。愛着を持って着てくれたらうれしいですね。そのために何度も何度もフィッティングを繰り返します。マニッシュですが、着ると女性らしく、美しく見えるように計算して服を作っています。

S 服を作るときのインスピレーションはどこから来るのですか?

R 自分の周りにあるものすべてです。女性のための服を作っているので、特に女性からインスピレーションをもらうことが多いですね。チームも全員女性だし、自分の服を着てくれている女性たちは、カルチャーも服のこだわりも理解してくれているから通じるものがあります。周りにいる人たちが一番刺激になる。

S  ロックさん自身のストーリーを教えてください。

R 韓国で生まれて、アメリカで育って、少しパリにいたこともありますが今はロンドンに住んでいます。ホームタウンはロンドンですね。デザイナーとしてのストーリーは、ロンドンのセント・マーティンズでメンズウェアの学士号、レディスウェアの博士号を取り、2010年に卒業した後は、セリーヌにいたフィービー・ファイロのもとで3年半働き、それからフリーランスデザイナーとしてルイ・ヴィトンとクロエでも仕事をしました。「ロク」というブランドを設立したのは2016年、ファーストコレクションは2017年です。

S そして2018年には「LVMHプライズの特別賞」を受賞されましたね。おめでとうございます。どんなお気持ちでしたか?

R とてもラッキーだと思いました。候補ブランドの中では最も歴史が浅いブランドだし、まさか受賞できるとは思っていませんでした。チームの皆や友人たちがすごく喜んでお祝いしてくれたのが、とてもうれしかったですね。

S 今年の3月におこなわれた秋冬コレクションは、受賞後最初のショーでとても注目されたと思うのですが、どんな気持ちで取り組まれたのですか? その前のプレコレクションのときとは、また違うエネルギーがあったように感じたのですが。

R 服作りに関して違いはないのですが、メインコレクションの場合はシーンとしてシネマティックだったりドラマティックだったり見えるようにしていて、ショー全体で「ロック」の世界観が見えるような工夫をしています。秋冬のコレクションもまさに“ストーリーテリング”をテーマにしていて、テキサスに住んでいた子供の頃、真っ暗な夜道で懐中電灯を照らしながら歩いた思い出をショーに反映させています。暗いランウェイをモデルたちにライトを持たせて歩いてもらい、見ている人たちに幼少期の思い出を追体験してもらうような演出です。

S 秋冬コレクションは、シルエットはマニッシュだけど着ると女性らしくて、とても着心地がよさそうですね。どこか懐かしい印象があるのも魅力的です。

R 僕がテキサスで暮らしていたのは1980〜90年代。その頃のアメリカのインテリアもインスピレーション源なので、わざと色が褪せたようなテキスタイルとか、なつかしい雰囲気のハンドニットなどを取り入れているんです。幼少期の思い出といえば、放課後は友達と自転車で出かけ、森や川で遊んだこと。その情景はなんとなく『ストレンジャー・シングス』というドラマに似ているんです。あのドラマも1980年代のアメリカの田舎町が舞台。ドラマのディテールが、僕の思い出と重なります。

S 聞いているだけで情景が思い浮かびます! ロックさんの興味は本当に多方面にわたっていますね。特に好きなジャンルはありますか?

R 何かひとつに固執することはなく、ライフスタイル全般に関心があります。人々のリアルな日々の暮らし、生き方、考え方、そういうことも含めてライフスタイルなのだと思います。それらがひとつずつ新しいカルチャーに結びつくのではないかと考えています。人がとても好きなんだと思います。

2019-20秋冬コレクションより。 まず、素材や縫製が素晴らしく、構築的なデザインでありながらディテールに工夫がこらされていて、着るとエレガントな空気に包まれるような着心地。デイリーにも着こなせそうな絶妙なバランスも魅力の「ロック」。今シーズンのアイテムで、ますますファンを増やしそうだ。

S 休みの日は何をしているんですか?

R ほとんど犬と遊んで過ごします(笑)。あとは植物の世話をしたり、近所の公園を散歩したり。穏やかな休日です。

S ロンドンで一番好きな場所は?

R 自宅です(笑)。白い家具を置いただけのミニマムでクリーンな部屋。犬と植物以外、特別なものはありません。仕事をするスタジオは自宅の近くにあります。スタジオも白いキューブ型の空間です。

S 私はもロンドンが大好きでよく訪れるのですが、いつもヴィンテージショップを中心に、洋服ばかり見てまわっています。ロクさんはどんなショップでお買い物するんですか?

R 僕もヴィンテージショップは好きですね。ショップで発掘するのは本当に楽しい。でも今日はたまたま「ロック」の服を着ていますが、ふだんはスーパーカジュアルです。どの写真を見てもいつも同じようにラフなかっこうをしている。

S 自分の性格を自己分析すると?

R いたって普通。でもファッション業界はスペシャルな人ばかりだから、その中で普通すぎる僕はむしろスペシャルかもしれない…(笑)

S ブランドの今後のヴィジョンはありますか?

R メゾンを目指していきたいですね。今は単発で“ストーリーテリング”を考えているけれど、それが次につながり続いていくといいなと思います。それからパリや東京にショップを作りたいし、自分の写真展もやりたい。洋服を展示するエキシビションもやりたいし、や、自分の写真展もやりたい。今は小さなブランドですが、やることは大きなメゾンと変わらないということを目指して、規模は小さく内容は濃いブランドになっていけたらいいなと思います。<

愛犬の写真を見せてくれたロック・ファン氏。初来日で買ったものは愛犬のお土産だという。「今後はもっと日本に来る機会を増やしたいですね」

S 10月18日から白金台のBIOTOPで「ロック」のポップアップを予定しています。そこでは、ロックさんが思い描いているヴィジョンに、少しでも近づけるような内容のイベントにしたいと考えています。

R とても楽しみです。日本のみなさんにぜひ「ロック」の世界観を知っていただきたいですね。

ROKH

ROKH HWANG 韓国生まれ。幼少期をアメリカ・テキサスで過ごし、その後家族でイギリスに移住。セントラル・セント・マーティンズ美術大学でメンズウェアとレディスウェアを学ぶ。2010年からフィービー・ファイロ率いる「セリーヌ」でアシスタントデザイナーを3年間務め、その後はフリーランスで「ルイ・ヴィトン」や「クロエ」のデザインに関わる。2016年に「ロク」を立ち上げ、2017年にコレクションデビュー、2018年LVMHプライズの特別賞を受賞。一躍注目ブランドになった。

Interview with

Interview with 曽根英理菜(BIOTOP レディスバイヤー)

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