No.9 Mathieu de Ménonville<br />Rémi de Laquintane
現代のパリジャンのライフスタイルと、伝統的なフランスの技術。
モダニズムとエスプリが融合して生まれるメリンダ グロスのコレクションにいま、
服好きな男たちが注目している。
由緒正しい血筋の、インテリジェンスあふれる2人が作る上質で美しい服は、
今秋ますますファンを増やしそうな予感。
右がマシュー、左がレミ。白金台のBIOTOPの印象は「ツリーハウスがある庭が気に入った」(マシュー)、「家で寛いでいる気分」(レミ)。
Mathieu(以下M) BIOTOP大阪のオープン、おめでとう!
迫村(以下S) ありがとう!大阪でもメリンダ グロスは人気だよ。メリンダ グロスも今秋、パリに新しいショップができるらしいね。
M いま、マレに1軒とサンジェルマン・デ・プレに1軒あるんだけど、マレのショップが〈merci〉と同じ通りに引っ越すことに。いまよりも広くなって、ファサードはコンテンポラリーだが中はフレンチ・トラディショナルなイメージにする予定。面白いショップになると思うよ。
S それは楽しみ!ますます注目を集めそうだね。僕もメリンダ グロスの服をたくさん持っているけれど、どれもクオリティが高くて素晴らしい。
M 実は、GQフランスの推薦で〈ウールマーク・プライズ〉にノミネートが決定したんだ。この賞は約50年の歴史があって、第1回はイヴ・サンローラン、第2回はカール・ラガーフェルドが受賞している名誉あるプライズ。メンズは今回が初めてだと聞いて、ますます感動したよ。
S やはりクオリティが認められたんだね!
R そう、ノミネート理由はファブリックのクオリティに加え、メインアイテムをフランス製にこだわっている点、そして何よりも、パリのワードローブを提案するメンズウェアの復活ということに貢献した点だそう。
S それはすごい!きちんと評価してくれてうれしいね。
M 日本ではまだあまり知られていないうちから、BIOTOPはウインドウディスプレイやポップアップなどでサポートしてくれて、本当にうれしかった。僕たちが考えるメリンダ グロスのアイデンティティは、BIOTOPにとてもマッチしていると思う。
S 秋冬コレクションを見て、メリンダ グロスはさらに進化していると思った。シンプルで上質、そして洗練されている。決してキャッチーではないけれど、今の時代に求められている気分があると思う。BIOTOPではメリンダ グロスを知らないお客様でもすぐに気に入ってくれるし、実際売れているよ。フレンチ・カジュアルのポップさとはまた違う知的さが魅力だと思う。
M ディテールにきちんとこだわった服が、これからは必要とされるんじゃないかと考えて、ていねいに作っている。本物のパリのワードローブを感じてもらえたらいいね。
着心地だけでなくディテールも堪能してほしいテーラードジャケット。¥85,000
S マシューとレミはどうやって知り合ったの?
R 僕らはどちらも800年くらい前から続く家で、代々知り合いなんだ(笑)。僕はボルドー生まれでマシューはパリジャン。彼の家は曾祖父の代からコニャックを作っている。僕はプリンストン大学で、マシューはニューヨークのThe News School for Social Researchで2人とも哲学を学んでいたという共通点もある。
M あと僕らの家はずっと乗馬をやっていて、古くからオーセンティックなブランドに馬具や乗馬服をオーダーしていたので、代々受け継がれてきたコレクションがたくさんあるんだ。それらを現代の自分たちの体型やライフスタイルにあうよう、シャープでクリーンで繊細なシルエットにアレンジしたいと思った。それが服を作り始めたきっかけだね。
S なるほど、それでフランス国内の工場で生産することにこだわるんだね。洗練されているのに、ディテールにはフランスの伝統が感じられるのはそのせいか。ところで「メリンダ グロス」というブランド名の由来は?
M インスピレーションから生まれた、想像の中の女性の名前なんだ。彼女はポエティックでコンセプチュアルなキャラクターで、僕らのミューズでもある。
S 名前からするとアメリカ人?(笑)
M それはミステリーなんだ(笑)。
オリジナルプリントを使ったスニーカー。各¥22,000
S パリではふだんどんな生活を?
R カフェ ド フロールでワインを飲んだり、シネマを見に行ったり。週末は田舎で過ごす。海に行ってサーフィンしたり、森の中をランニングしたり、もちろん乗馬をしたり。いたって普通だよ。
S 服のアイデアはいつ考えるの?
M 毎日考えているよ。友人との会話、日常のさまざまな風景、生地、旅などからもインスパイアされる。そして自分自身が本当に着たいものは何かを、常に自問自答する。
ウイングカラーではないのでワードローブとしても着られるタキシードシャツ。¥35,000
S 旅先で好きなのはどこ?
R パリ、京都、LAかな。
M 僕はまずギリシャ。島に別荘があるので、夏になると必ず行く。すごく美しいところだよ。それからガールフレンドがアメリカ人だからアメリカも好き。そして東京。
R あと数年したら東京にもショップを出したいね。そのためには、日本で築いたリレーションシップを大切にしていきたい。
M 迫村さんが言う通り、メリンダ グロスはキャッチーではないから、浸透するには時間がかかるかもしれない。でも必ず理解してもらえるはず。妥協しない最高のテクニック、クオリティをめざして、本当にいい服を発信し続けたいと思ってるんだ。
S 今年の秋には、BIOTOPでポップアップショップをやりたいね。そのときはぜひまた来日してください。そうだ、ローンチパーティでコニャックを出すのはどう?
M それはいいアイデアだね。ぜひ。
柔らかい風合いのハイゲージニットポロ。各¥31,000
マシューは2回目、レミは4回目の来日。BIOTOPにメリンダ グロスの秋冬コレクションが並ぶのが待ち遠しい。
MELINDAGLOSS
Interview with
迫村 岳
(BIOTOP ディレクター)
2009年にパリでスタートしたメンズウェアコレクション。モダンと伝統をハイブリッド、シンプルで洗練されたパリジャンのワードローブを発表している。コレクションのほとんどはパリとリモージュで、シャツはベネチアとポルトで作られており、特にジャケットやアウター類はフランス最古の工場で生産することにこだわっている。