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BIOTOP PEOPLE

No.31 HIROFUMI KIYONAGA

HIROFUMI KIYONAGA
BIOTOP PEOPLE No.31 HIROFUMI KIYONAGA
東京と大阪に続くBIOTOPの3店舗目が、4月26日福岡にオープンする。
ファッションやナチュラルコスメ、ライフスタイル雑貨、ボタニカルをそろえ、
カフェ&レストランも併設した3階建ての一軒家は
大濠公園や福岡城跡がある、緑に囲まれた閑静なエリアに建つ。
「BIOTOP FUKUOKA」がオープンに至った経緯を
アドバイザーとして参画した清永浩文さんに聞いた。

東京と福岡の2拠点で生活しているという清永さん。「空港も駅も近くてアクセスがいい、街がコンパクトなので移動がラク、物価が安い、食べ物がおいしい、海もあれば山もある、南国じゃないのに空気が適度にゆるい、と福岡の長所を次々と挙げてくれた。

迫村 4月26日に、ようやく「BIOTOP FUKUOKA」がオープンします。構想段階からいろいろアドバイスをいただき、ありがとうございました。清永さんは福岡の街のことや人のこと、本当によくご存じですよね。

清永 大分出身で22、23歳の頃から東京に住んでいますが、約3年前から福岡に家を借りて2拠点生活をしているんです。1年のうち1/3くらいは福岡で生活していますね。「なぜ福岡なんですか?」とよく聞かれますが、僕はいつも「ちょうどいいから」と答えています。東京では 1.5 倍速くらいの感覚、たまに大分に帰省したり休暇で南国へ行ったりした時に 0.5 倍速の感覚で 平均 1.0 倍速になるような生活ですが、福岡にいるとそれが無理せず 1.0 倍速で生活できるんです。ちょうどいい(笑)。食事は安くてうまいし、ファッションでもなんでも欲しいものはほぼ手に入るし、志の高い人もたくさんいて刺激がある。本当に生活しやすいです。

迫村 清永さんが福岡に作った「KIYONAGA&CO.」も、とても居心地のよい素敵なショップでした。

清永 福岡で1年くらい生活していたら、何か仕事がしたくなって(笑)、そんなときにたまたま、赤坂の端っこという、繁華街から少し離れたチャレンジな場所ながら、SOPH. FUKUOKA も近くにあるとても気持ちいい物件と出会いました。オンラインショップもない、卸もしないというとても不親切な店で(笑)、そこでしか買えない商品だけを置いていました。2年ほどやって最近クローズしたんですが、その店があったエリアがとても気に入っていたんです。大濠公園が近くて緑がいっぱいで、ゆったりと時間が流れているような。ちょっと白金台とも似ているなと感じていた。だから、たまたま不動産屋さんが持ってきてくれた話が同じエリアの物件だったので、これはBIOTOPにいいんじゃないかと思い、すぐに迫村くんに連絡したんです。

迫村 2年くらい前だったか、僕も別のルートからあの物件の話が来ていて、そしたら清永さんからも「いい物件が出たから1度見に来たら?」とお誘いいただいた。それでちょうど「KIYONAGA&CO.」でのポップアップの準備がてら福岡に行ったときに周辺環境含めて案内してもらったんですよね。いつもはタクシーで移動する清永さんが、めずらしく「歩いて回ろうぜ」と言って30〜40分ほど一緒に散歩しましたね。ここはこういうエリアで、こういう人が住んでいて、こういう時間帯はこういう人の流れで……とか丁寧な解説付きで。

清永 そしたら、すぐに落ちたよね(笑)。

迫村 ですね(笑)。ポップアップの時にお会いした地元の方々も、口をそろえて「あそこはいい」と言っていて。清永さんも「何でも手伝うよ」と言ってくださったこともあり、本気で出店を考えようと思いました。

今後福岡でさまざまなイベントを仕掛けていきたいと盛り上がる2人。「福岡だけでなく九州全体に興味を広げ、面白いものを見つけて東京や大阪のBIOTOPで紹介してほしい」と清永さん。

清永 白金台のBIOTOPがオープンしたのが2010年で、大阪・堀江の2店舗目が2014年、そして今回の福岡は3店舗目。とてもゆっくりと大切に育てているからこそ、ブランディング的にも最高の環境が必要だと思った。

迫村 それでどんな店にしていくか自分なりに考えていったわけですが、まず、ああいう気持ちいい場所だから“家”みたいにしたいなと。それで思い描くイメージを、内装をお願いした大堀伸さんに伝え、家具は清永さんに強力なサポートをしていただきました。

清永 什器や家具に関しては、お金をかけてビルドアップしていくべきだと僕は考えています。昔の名店って、いいアートやいい家具がさりげなく置いてあって、店から学ぶことが多かったでしょう? そういう部分でお客さんをもてなすことも大事だと思います。

迫村 内装は大堀さん、家具は清永さんに相談し、植栽は白金台と同じSOLSOの齋藤太一さんにお願いして、みんなで現地を見に行って盛り上がりましたよね。そして次に、食をどうするかを考えた。地元の人にお願いするのか、東京の人にお願いするのか。そのときに以前清永さんから紹介していただいた料理研究家の渡辺康啓さんの顔が浮かんで、再度連絡を取っていただきました。

清永 渡辺さんは数年前に東京から福岡に移住した方。だから外からの目線で福岡のいいところを再発見してくれるんじゃないかと思ったんです。もともとアパレルにいらしたからファッションマインドもお持ちだし、一体どんなメニューを考えるんだろうととても興味がわいた。いろいろな意味で面白いことになりそうだなと。

1階と3階はカフェ&レストラン「ラムジオ」、2階はファッション&ライフスタイル、ボタニカルショップの「ビオトープ ナーセリーズ」が入る。1階のカフェで提供されるお茶やスイーツはテイクアウト可能。

迫村 僕から渡辺さんにお願いしたのが、素材を活かしたシンプルな料理と健康的な印象のレストランにしたいという事。そこで渡辺さんがプロデュースしてくださったメニューはイタリアン。素材の味を引き出すシンプルな味付けなので、男性も女性もおいしく食べられそうなグレードの高い料理になっています。渡辺さんが各地の知り合いに話してさまざまな食材を入手してくれて、デザートや飲み物まで提案してくださいました。

清永 あの場所は東京でいったら、三軒茶屋あたりに住んでいるファッションピープルが、自転車で渋谷に通勤する途中に通りかかる、みたいなところなんです。だから朝お茶ができたり、パンが買えたりしたらいいなと。福岡はスイーツが食べられるところが少ないので、それも楽しみですね。

迫村 あと、これは清永さんのお店から学んだことなんですが、ここでしか買えないというものを充実させていきたいと考えています。各ブランドに別注を頼んだり、オリジナルプロダクツやお土産的なものも増やしていきたいですね。

清永 海外出張によく行く人たちがみんな言っているんだけど、最近買って帰りたいものがないよねって。ネットでなんでも買えるしね。出張で福岡行ったついでに買って帰ろうと思える、ファッション・ヴィクティムをくすぐる特別なものがあったらいいと思います。

「ずっと福岡を見てきて、最近変わったなと思うことは?」(迫村)「移住組も増えて風通しがよくなり、タテ社会がなくなって、地元の若い人が自由に仕事をしているような気がします」(清永さん)

迫村 清永さんはよくご自分のことを“ボランチ”とおっしゃいますが、本当にそう。いつもいいパスを出してくれて、あとはうまくやれよ、という(笑)。福岡にたくさん知り合いをお持ちですけれど、昔からつながっていたんですか?それとも住んでからですか?

清永 僕は大分生まれだから、若い頃は買い物に行くといえば熊本か福岡だったし、東京に出てからもよく出張で福岡に行っていたので、10代20代からの知り合いは多いですね。そして住むようになって、ますますいろいろな人たちとつながっていきました。

迫村 地元を盛り上げる意識みたいなものが強いですよね。たとえば大分トリニータをずっとサポートしていたり。

清永 「SOPH.」を立ち上げたのが1998年で、サッカーラインのF.C.Real Bristolを1999年にスタートした。その年から20年、大分トリニータのスポンサーをやっていますが、言ってみれば“奉納”とか“ふるさと納税”のようなもの。サッカーで商売やらせてもらっているので、何かお返しがしたいと。昨年は「KIYONAGA&CO.」として福岡のチームをスポンサードしましたし、もし東京23区内にサッカーチームがあったらたぶん同じことをすると思う。

迫村 「BIOTOP FUKUOKA」もいずれ店の中だけではなく、地元を巻き込んでイベントができたらいいと考えています。

清永 福岡市は“セントラルパーク構想”なるものを計画していて、大濠公園や平和台競技場、福岡城跡や舞鶴公園など、BIOTOPのあるエリアを一体化させて活用しようとしています。それが完成したらますますいい街になりそうだから、何かを仕掛けるのはすごくいいタイミング。家賃も物価も安いから住みやすいし、中心地から空港まで地下鉄でたったの15分くらいだから、他の都市と気軽に行き来できる。将来的にはアジアの入り口ともいえる、面白い都市になっていくんじゃないかな。

迫村 福岡はエネルギッシュなので、今までとまったく違う発想で地元と関わったり、ユニークなイベントができそうな気がしています。福岡にベースができたので、そこからさらに九州全体に目を向けて、さまざまな職人技を探したりもしてみたいですね。

清永 これからは都会の魅力を地方に伝えるよりも、地方の良さを都会に紹介することのほうが主流になりそうです。「BIOTOP FUKUOKA」がその窓口になったら面白いね。福岡や九州を盛り上げるために、地元の面白い人やものを全国に紹介していく。そのハブともいえるような存在になってほしい。セレクトショップって、本来そうあるべきだと思います。

スマホで地図を出して、「BIOTOP FUKUOKA」の場所や周囲の施設、そして福岡市が進めている「セントラルパーク構想」について説明してくれた。

Photo YOSUKE EJIMA Composition AYUMI MACHIDA

HIROFUMI KIYONAGA

1967 年大分県生まれ。98 年「SOPH.」を (2002 年に SOPHNET. へ改名 )、翌 99 年に「F.C.Real Bristol」を立ち上げる。 2008 年には uniform experiment をスタートするなどチャレンジングな戦略でシーンを牽引し続けている。 福岡市・赤坂に、自身の名を冠した「KIYONAGA&CO.」を 2017 年 4 月 ~2019 年 4 月の 2 年間展開した。

Interview with

迫村 岳
(BIOTOP ディレクター)

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