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BIOTOP PEOPLE

No.6 THADDEUS O’NEIL

哲学の博士号を持ち、写真家ブルース・ウェーバーに師事し、詩や小説を書き、
なによりも海を愛するニューヨーカー、サディアス・オニール。
彼の作る、自由でカンファタブル、そしてアーティステックな服は、
まさに理想のサーフスタイルだ。

迫村(以下S) NYでサディアスの服を見た瞬間、いいなと思ったんだ。洋服というよりも、いい意味でひとつひとつが手作りのアートっぽいなと。あとからサディアス本人のバックグラウンドを知ってさらに納得、ますます興味を持った。荒削りで未完成っぽいところにすごく可能性も感じたし。

Thaddeus(以下T) 迷わず決めてくれたので驚いたよ。岳さんは服のバイヤーというよりは、自分が気に入ったアートを即買いする美術評論家みたいな印象だった(笑)。

S 決して安くはない値段で、きちんと物作りをして勝負しているよね。サディアスはとにかく素材が面白い。日本で見つけた美しい素材を生かして、アートのように服を作っている。1枚着るだけで、がらっと違う雰囲気が出せるところが魅力。似合う人が着るとものすごくかっこいい。

T どんなタイプの人が買ってくれているか気になるんだけど。

S BIOTOPに置いてある他のブランドで例えると、〈ジ エルダー ステーツマン〉とかを着て車でサーフィン行くような、ラグジュアリーなんだけど気取っていない人。そういう人がすごく気に入ってくれる。

T それはうれしいね。日本人はファッションやアートをリスペクトしていて、アメリカ人にはないセンスを持っているからね。どこのショップも内装からセレクトからすごくレベルが高くて、日本のマーケットは本当にファッションの意識が高いと思う。今回も日本でいろいろショップを回っていると、すごく圧倒されるしインスパイアされるね。

BIOTOPの1階にあるポップアップ・ショップには、写真作品とペインティングも。

S NYにいるときはどんな暮らし?

T 朝起きて、妻と子供を起こして、朝食を食べて、仕事に行って…いたって普通だよ(笑)。でも波があれば海へ行く。週2〜3回かな。生活の中心は、家族と波。それから本を読む。大学で哲学を勉強したから、そういう本をたくさん読む。本を読むことは自分の根源だと思っている。そして詩や小説を書く。写真も撮る。

S それは服を作ることに影響している?

T 自分を表現するという意味で、写真を撮ったり詩を書いたりすることは、服を作ることと同じなんだ。さまざまな経験が生かせるから、服作りは本当に面白いよ。

サディアスが撮影したショートムービーも世界初公開で上映中。彼の世界観がたっぷり味わえる秀逸な作品。ショートバージョンはこちらから http://vimeo.com/46304941

S 服を作ろうと思ったきっかけは?

T ブルース・ウェーバーのアシスタントをしていた頃から、撮影で世界中旅をしてきたんだけど、行く先々で面白い生地を買い集めて、それで友人に服を作ってあげるようになった。インドでいい生地を見つけたからこんな服を作ってみたけどどう?って。それが服作りのスタートだったから、言ってみれば「旅から生まれた服」。よくボヘミアンな雰囲気だと言われるのはそのせいかもしれない。今まで訪れた中で特に好きなのはバリ島。それからチリやペルー、ブラジルなど南米もいい。とにかく海のあるところへ向かう。僕にとって海は、物作りのインスピレーションを与えてくれる最高の目的地なんだ。

ポップアップ・ショップでは服や写真のほか、サディアスの詩集なども展示されている。

S サディアスのそういったバックグラウンドを知れば知るほど、BIOTOPでもきちんと世界観を伝える見せ方をしなきゃいけないと思うんだよね。

T 今回もいい形でポップアップ・ショップを企画してくれてとてもうれしく思っているよ。ところでバイヤーってセンスとか好みで物を選ぶ部分と、コマーシャル的なことを考えなきゃいけない部分と両方の面が必要だと思うけれど、どうバランスを取っているの?

S 基本的に直感でいいと思った物を入れる(笑)。何でもある店にしたいから。すごくモードなもの、すごくストリートなもの、すごくトラディショナルなもの、何でもあってその中でメリハリをつけることを考える。サディアスのようなブランドなら、きちんと向き合ってその世界観をショップの中でも表現したいと思う。でも逆に売れるとわかっていてもかっこ悪いものは置きたくない。数字稼ぎのために入れている物があると、他の物までよく見えないんだよね。わざわざ白金のBIOTOPまで足を運んでくれて、どこにでも置いてある物が並んでいたらつまらないでしょう?

T たしかに。BIOTOPは新しいものを持ってきてただ置くだけじゃなく、セールスまで含めてみんなで盛り上げようとするチームワークがあると感じた。だから勝負ができるんじゃないかな。

S BIOTOPのイメージをひとことで言うと?

T やはり植物。ショップの1階にグリーンショップがあるのが象徴的だと思う。水をやり、手入れをして植物を育てるように、新しいブランドを入れ、それを大事に育てようとしてくれる。ガーデナー的な感性を持ったショップだね。

見た瞬間、買うと即決したメンズバイヤー迫村は「まず服が気に入って、あとから彼の個性を知ってますますサディアスの作るものに興味を持った」という。

Photo / Ittoku Kawasaki Composition / Ayumi Machida

THADDEUS O’NEIL

フォトグラファー、詩人、小説家としても活躍するデザイナー、サディアス・オニールが提案するサーフ・シックなプレミアム・プレイウェア。日本の生地を使って、海を感じるモダンなデイリーウェアをデザインする。肌に触れる部分に繊細な生地を施したりと、サーファーならではの着心地にこだわったディテールにも注目。
〜4月6日(日)までBIOTOPにてポップアップ・ショップを開催中。

Interview with

迫村 岳
(BIOTOPメンズバイヤー)

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