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BIOTOP PEOPLE

No.22 Maria Zolezzi

Maria Zolezzi
BIOTOP PEOPLE No.22 Maria Zolezzi Maydi デザイナー
温かみあふれる素朴なチャンキーニットでありながら
選りすぐりの素材、伝統の職人技術を生かした
存在感あふれる〈Maydi〉のニットがBIOTOPに登場する。
アルゼンチン出身のデザイナーのマリア・ゾレッツィ、通称マイディは
パリのファッションシーンで活躍後、故郷でブランドを立ち上げた。
初来日にともない、その骨太で繊細なニットが生まれる背景について聞いた。

旅や建築、アートなどにインスパイアされることが多いというマイディ。日本でもジャコメッティ展や安藤忠雄の建築を訪れたそう。

梨本(以下N) マイディさんのインスタグラムを拝見しているんですが、今回はずいぶん日本国内を旅されていますね。

Maidi(以下M) 日本は初めてなので、夫と一緒にあちこち訪ねています。広島や京都、大阪……どこも本当に素晴らしい経験でした。そうそう、神戸で食べたお肉は、いままで食べたお肉のなかで一番おいしかった!来年も絶対来ようと思っています。

N 日本については、今までどんなイメージを持っていたんですか?

M 昔から山本耀司や三宅一生など、日本のデザイナーにはいつもインスパイアされてきたので、いつか日本の文化をこの目で見てみたいと思っていました。パリの展示会では日本のいろいろなショップに買い付けていただき、〈Maydi〉のハンドメイド・ニットが日本の方に支持してもらえているんだと思うと、本当にうれしいです。今回、自分の商品が並ぶショップを実際に見ることができて感動的。地球の反対側から20時間以上飛行機に乗ってきたかいがありました!(笑)

パリのショールームで初めて会った時から意気投合したマイディと梨本。来シーズンはホームコレクションも充実させたいと聞いて、「引っ越しするからちょうどいい!」。

N 私はパリの展示会で、ひと目見た瞬間にこれだ!と思いました。BIOTOPはハイブランドの服も取り扱っていますが、それらと並んでも遜色ない存在感、迫力があり、ハンドメイドならではの強さと豪快さを持ったニットをずっと探していたんです。だからやっと見つけた〜という感じでした。それでいろいろ話を聞いてみたら、職人さんも素材も自分で探しているとおっしゃって、ああそういう強い意志みたいなものと、女性らしい繊細な感覚の両方がこのニットのバックグラウンドにあるんだなあと思いました。

M オーガニックのメリノウールはいつも手染めをしているんですが、手染めにこだわるのは、素材や気候によって色が微妙に変わるので、それに柔軟に対応できるように。ひとくちに職人さんと言っても、糸を紡ぐ人、編む人、染める人などさまざまなスペシャリストがいるんですよ。

N ニットの知識や技術はどこで学んだのですか?

M パリで、ソニア・リキエルなど数人の有名なニットデザイナーのメゾンで働いたことがあり、その時に本格的に勉強しました。その後ブエノスアイレスに戻ってから〈Maydi〉を始めたのですが、アルゼンチンには昔からハンドメイドの職人が大勢いるし、メリノウールやラマ、アルパカなどいい素材がたくさんあります。だから伝統的にニット産業が盛んなんです。ニットの技術は代々受け継がれてきましたが、最近の若い人はあまりニットを作らないので、いつかNPOを作ってその伝統を若い世代に伝えていけたらと思っています。

2017-18秋冬コレクションより。今季のテーマは「TRANSFORMATION」。ナチュラルなカラーでも編み方やデザインで表情が異なる。

N パリの展示会のときにマイディさんが、自分のニットはラグジュアリーなものと一緒に置いてほしいんだと言っていたのが印象的でした。すごく考え方が似ているなと。私も自分がバイイングしたハイブランドの隣に、人の手の温もりが感じられるような、職人のこだわりが感じられるような、そういったものを並べたいと思っていたんです。でもそれは一体どういうものなんだろう……とずっと考えていた。だから見た瞬間、運命を感じたんです。

M 私は、ファッションはもちろんですがファッション以上のことを提案したいと思っていて、それは何かというと「ライフスタイル」なのかなと思っています。だから自分のブランドを、あるべき場所、正しい場所、きちんとフィロソフィをわかってくれる場所に置いてほしいいう気持ちがすごくあるんです。エルメスで働いていたときにすごく感じたのは、バッグにしろ、スカーフにしろ、フィロソフィを持ってきちんと作られたものは、ものの向こうに作っている人を感じることができる。〈Maydi〉は職人や素材を自分で選び、タグの一枚一枚も自分で刻印しています。ディテールのすみずみまで、自分という背景が映るようこだわっていて、そういう背景がきちんと感じられてこそ、ラグジュアリーなものと並んだときにマッチするんじゃないかと考えているんです。

N そういった背景は、ものの存在感に確実に現れます。私が展示会場に入った瞬間に感じたのは、そういうことだったんだなと今思いますね。

M 私は逆に、梨本さんが入ってきたとき、シンプルなのにエレガントな着こなしに一瞬で心奪われました。そして話しているうちに、ああ、この人がセレクトしたものが置いてあるショップに、ぜひ私のニットを置いてもらいたいと思いました。

チャンキーなニットはモード感たっぷり。¥73,000

N 相思相愛ですね!(笑)毎シーズン、トレンドを感じさせるアイテムをセレクトしていますが、コンテンポラリーなだけじゃなく、タイムレスな魅力を持ったものも同時に置きたいと考えていたんです。そんなときにぴったりなものに出合えてラッキーでした。日本で行われた展示会では、スタイリストとか編集者とか、たくさんお洋服を見てきた方々が、〈Maydi〉を見てすごくかわいいと言ってくれました。ブランド名もかわいらしくてキャッチーです。

M 子供の頃からのニックネームなんです。友達のお母さんが書いた本の主人公がマリア・デリシアといってマイディというニックネームで呼ばれていた。私の名前もマリアなので。42歳になった今も、ずっとマイディと呼ばれています(笑)。

N 温かみのある響きですね。〈Maydi〉のニットによくあっています。今シーズンはどんなイメージで作ったんですか?

M アルゼンチン北部を旅行したときに、その広大さや色合いに感銘を受けたんです。セメント、メタリックグレー、ナチュラル、ミッドナイトブルー、小麦の色。そういった自然の色を意識しました。そして、いままで使っていたパタゴニア産のオーガニックメリノに加えて、アルゼンチン北部プーナのラマウールも取り入れています。じつはすでに来シーズンのアイデアもたくさんあって、次はバッグを増やしたり、ホームコレクションも展開しようかなと考えています。ランプシェードとかソファのカバーとか。日本ですっかりバカンスを満喫したので、帰ったら仕事しなくちゃ!(笑)

N うわー、楽しみですね!来年いらしたときには、日本のお客様の反応をお伝えしますね。きっとファンが増えていると思います。

M そうだったらうれしいです!

マイディが「ポンポンバッグ」と呼ぶニットバッグ。飾ってあるだけでもたまらなくかわいい。¥43,000

Photo/Ittoku Kawasaki Composition/Ayumi Machida

Maria Zolezzi

マリア・ゾレッツィ●アルゼンチン生まれ。アルゼンチン人とフランス人の両親を持ち、ロンドンのファッションカレッジを卒業後、12年間パリとミラノのさまざまな有名ブランドでPRやマーケティングに携わる。2014年、アルゼンチンに戻り〈Maydi〉を設立。天然素材のオーガニックヤーンを使い、アルゼンチンに昔から伝わるハンドメイドの技術でコンテンポラリーなニットを提案している。

Interview with

梨本友美
(BIOTOPレディスバイヤー)

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