menu
BIOTOP PEOPLE

No.11 MARIKONAKAYAMA

おしゃれが大好きな大人の女性たちの間で、じわじわと話題になっているブランド、
それが、人気スタイリスト中山まりこさんがディレクションするMADISON BLUE。
シャツから始まって、今シーズンはジャケット、コート、ニットと
ファッショニスタがうなるベーシックアイテムが増えている。
まだまだ作りたいものがたくさん、と語る中山さんにブランド誕生秘話を聞いた。

中山まりこさんが着ているのはメンズのワークシャツをリサイズしたもの。サイドやバックから見たシルエットもきれい。シャツ¥33,000(MADISON BLUE)

藤井(以下F) 去年の夏頃でしたっけ?「洋服作りたいんだ」っておっしゃっていたのは。それから半年後にはもう展示会をしていた。「作りたい」から「作っちゃった」までが早かったですね。

中山(以下N) そうそう、相談したよね。洋服を作りたい作りたい…って思っていて、頭の中にやりたいことがたくさんあった。でもブランディングというか、私にしか作れない服って何だろう、と考えたらつい悩んでしまってなかなか踏み出せなかったの。だってファストファッションへ行けばトレンドをうまく取り入れたものがいくらでもあるし、ハイブランドへ行けば素敵な服が並んでいる。別に私が作らなくてもいいじゃない、って思っていたから。

F それでも作ろう!と背中を押したものは何だったんですか?

N スタイリストの仕事って、広告でも雑誌でも消費者の顔があまり見えないから、私はそろそろ、そこまで届く何かをしたかったの。自分で洋服を作れば、私がバイヤーに説明して、バイヤーからショップスタッフへ、そしてショップスタッフからお客様へと伝わって、自分の思いが届くんじゃないかと。だから何が何でも洋服を作らなくちゃ気がすまん、って気持ちになった。

スタイリストとしてのさまざまな経験が服作りに生かされている。シャツ¥27,000(MADISON BLUE)

F 最初は何から始めたんですか?

N 私ができることは何だろう、と考えたら「シャツだ!」とひらめきました。トラッドは好きだけど、だからといって全身トラッドでまとめるのは色気がないから、ちょっとモード感を足して…。おとなしいイメージよりは、少しとんがっているイメージのシャツ。それを作れば絶対自分らしさが出る、と。

F シャツってシンプルなだけにすごく難しいのに、いきなりちゃんと作っていてびっくりしました。

N 2回目に見にきたとき「あ、洋服屋さんになってる!」って言ってくれたよね(笑)。30年スタイリストをやってきて、単純にファッションだけじゃなかったのが逆によかったのかも。広告で普通のおばさんのスタイリングをしたり、ミュージシャンには古着を着せたり、ラグジュアリーもトラッドもパンクも何でも好き。それが自分では欠点だと思っていたけど、いつのまにかいろいろな服の良さを吸収していたみたい。だからトレンド過ぎずマニアック過ぎない普遍的なアイテムをと考えたときに、シャツが思い浮かんだ。古着とかアメリカンプロダクツも大好きだったから、最初はメンズライクなワークシャツをレディスサイズで作ろうと決めていた。

F 思っていることを形にするってすごく難しいじゃないですか。シャツっていうベーシックアイテムを、トラッド一辺倒じゃなくモードなニュアンスに落とし込んでいて、やはり本当に上質なものを知っている人だからこの完成度なんだなと思いました。大人の女性がいま着たい気分が等身大で表現されていて素晴らしい。若い人だってちょっと背伸びして着てみたいと思うんじゃないかしら。

美しいテーラリングにモダニティがプラスされたダブルジャケット。各¥85,000(MADISON BLUE)

N この間展示会に来た若い人に新鮮だって言われた。20代の人がジャケットとかコートとかオーダーしてくれて「きちんとしたジャケットを着たことないから着てみたい」って。

F 「厚み」みたいなものがある洋服を作れる人ってなかなかいないんですよ。やはり素材とか縫製とか、ちょっとしたこだわりの積み重ねが「厚み」につながると思うんですが、始めからそれが出来てるってすごい。

N 大型新人、がんばります!(笑)

F 今シーズンのジャケットも見事。特にダブルのテーラードジャケットは、ベースはしっかりしたテーラリングだけど、モード感がプラスされるところがさすが、まりこさん。ダブルのカシミアコートもしかり。しかも10万円台というのが驚きです。たくさん洋服を見たり着たりしてきたからこそ生まれた服なんですね。

右が噂のカシミアコート。袖を通せばその非凡なセンスに納得。¥158,000(MADISON BLUE)

N 作りたいものがたくさんありすぎて、今回はどうしようかなあと悩んでいるときに、「TOLL FREE」とか「HIGH! STANDARD」を思い出してなんとなく見に行ったのね。そうしたら昔と変わっていなかったの。「変わらない」って実はすごいことだと思う。だって本当に変わらなかったら古臭く見えるけど、昔と変わらず新鮮に見えるってことは、実は細かくアップデートされているってことじゃない?

F たしかに!本当に変わらないと止まって見えますものね。たとえばHYKE(注:大出由紀子さんと吉原秀明さんによるブランド)も昔から変わらないって言われるけど、green(注:大出さんと吉原さんが’98年にスタートして’09年に休止したブランド)のときとは明らかに違う。揺るぎないブランドイメージは保ちつつ、ちゃんと変わっている。だから新鮮さは変わっていない。

N じつはブランドを始めるとき、大出さんにも相談したの。そうしたら『いいじゃない!売れ線作ったって売れないから振り切ったほうがいいよ』ってアドバイスくれた。吉原さんからのメッセージは『やるんだったら自分らしい何かをやったほうがいい』だった。

F まりこさんだからそうおっしゃったんでしょうね。まりこさんなら訴える力があると。これからブランドをこんな風にしたいっていうイメージはあるんですか?

N あるある!敷居が高いブランドにはなりたくない(笑)。あとすごくおっきな夢だけど、サーフショップからコルソコモまで入っているようなブランドにしたい。だって私、海大好きだし、銀座の真ん中にいるのも好き。いろんな場所に行きたいし、いろんな人と話したい。そういう自分の価値観がそのままブランドのイメージになってくれたらうれしい。

F まりこさんの作る服って、着る人によって違って見えますよね。着る人の人柄が出るし、その人なりのかっこよさを表現できる服だと思います。

N そうだね、人に寄り添った服を作っていけたら幸せだなあ。

生デニムで作ったGジャン。ビッグサイズがボーイフレンド気分。¥39,500(MADISON BLUE)

Photo / Ittoku Kawasaki Composition / Ayumi Machida

MADISON BLUE

広告、音楽、ファッション、女優のスタイリングなどで活躍するスタイリスト中山まりこが、2014年春夏よりスタートさせたブランド。モードにもエレガントにもあうアティテュードで、質のよいカジュアルが実現する大人のおしゃれ好きのための服。

Interview with

藤井 かんな
(BIOTOP レディスバイヤー)

Back Number