No.51 MARI OKAMOTO
大切にしているのは、トレンドに流されすぎない“永く着られる服”と、日常にすっとなじむ自然体の美しさ。
パリで感じた“引き算の美学”や、旅先で出会ったさまざまな価値観が、そのスタイルのベースになっている。
今回は、彼女がセレクトしたアイテムが並ぶ新店舗「BIOTOP SAPPORO」で話を聞いた。
迫村 BIOTOPに加わってもう1年くらい経ったのかな?
岡本 1月入社なので、1年と少し経ちましたね。
迫村 となると、岡本さんがバイイングした商品がお店に並んだのは半年前くらいから?
岡本 そうですね、2025AWからなので半年前ですね。
迫村 お客様もまだ岡本さんのことをどんな人か知らないと思うので、このタイミングで色々と話を聞いて知ってもらえればと思っています。
迫村 まず、出身はどちらでしたっけ?
岡本 出身は広島です。
迫村 大学も広島?
岡本 大学は福岡の大学に進学しました。
迫村 大学卒業後、東京に出てきて某アパレルでショップスタッフとして就職したんだよね。それは東京採用だったの?
岡本 就職は新卒の東京採用だったので、東京の店舗で働き始めました。
迫村 ショップスタッフ時代は何店舗くらい経験したの?
岡本 入社後すぐに新店舗のオープンがあったりして、4店舗ショップスタッフとして経験しました。
迫村 店長まで経験した?
岡本 店長は経験していないですが、レディースのサブマネージャーまで経験させてもらいました。
迫村 そこから、バイヤーへという流れ?
岡本 そうですね、店舗勤務と並行してアシスタント的なことからスタートした感じですね。
迫村 なぜバイヤーへ異動に?本部に入りたいって言ってたの?
岡本 店舗では商品管理やVMDだったり商品のことに関わることが多くなり始めて、本部とのコミュニケーションを密にとっていました。
お客様の声を届ける意味合いで商品のことにも少しずつ意見が出来るようになって、バイイングに同行させてもらったり。
そんな経験があり、自然とバイヤーへ異動になっていった感じでした。

迫村 ファッションに目覚めたのはいつ頃なの?
最初から洋服が好きで、だからこの世界に就職というか、選んだのかなと。
中学生、高校生の頃なのかどんな感じだったのかなと思って。
岡本 「ファッションに目覚めた!」みたいな明確なきっかけの記憶はないんですけど。
家族が、特に父が買い物好きで、お洋服が好きだった影響は大きいと思います。
休みの日は地元の百貨店に家族みんなで買い物に行って、お茶するみたいな過ごし方があって。
祖母も洋服が好きだったので、家族での休日の過ごし方から洋服を着ることが好きになっていったって感じですね。
迫村 どんな洋服を着てきたの?
岡本 すごいミーハーでしたね 笑 学生時代ですよね?
迫村 そうそう。僕だったら小学6年くらいに古着を着だして、そのあと裏原行って、ギャルソン着てとか。
そういう遍歴でいうとどういう感じ?
岡本 それでいうと、中学2・3年の頃からお小遣いをちょっともらって友達とお買い物行くみたいなのがスタートですかね。
今でも記憶に残っているのは、高校の入学式の前にagnès b.に行って、時計とバッグを買ったことはすごく覚えています。
高校時代は、それこそセレクトショップが全盛期。
セレクトショップの店員さんがかっこよくて、広島にある某セレクトショップとか、あと個店もすごく多かったので、そういうところに通って。
SILASとかX-girlとか広島ではまだ取り扱っている店舗も1,2店舗しかなくて、雑誌を読み漁ってお店に通ってましたね。
迫村 この仕事を選んだのは、当時のセレクトショップや個店さんの影響を受けたのかな?
岡本 影響受けているかもしれません。
ファッションを身近に感じることが出来る一番近い存在だったので憧れの存在ではありました。
その頃のショップ店員の皆さんは個性もあってファッションの仕事を楽しんでいるようなイメージがあります。
ちょっと敷居も高い感じがして。
自分の就職を考えた時もファッション関係の仕事に就くことしか見てなくて他の業種の選択肢はなかったですね。

迫村 その後ファッション業界に入って、店舗を経験し、バイヤーは何年くらいやっていたの?
岡本 前職では約7年くらいバイヤーをやってましたね。
迫村 7年。結構長くやっていたんだね。主にはどのあたりにいつもバイイングの出張に行ってたの?
岡本 バイイングは、やっぱりヨーロッパが多かったですね、ミラノ・パリとか。
でも、コロナの時期もあったので半分弱はリモートで。
コロナ明けに、初めてニューヨークにも行きました。
迫村 そのあとは結構アメリカに買い付けに行っていた?
岡本 ニューヨークはその1回だけですね。
迫村 いろんな場所に行く中でもやっぱりパリが中心?
岡本 そうですね、パリが中心になります。
迫村 そんな出張の中で一番自分の思い入れがあったブランドとかってあった?前職時代に影響を受けたとか。
岡本 色々とありますけど。
前職時代はコレクションブランドも多く行っていたので、Maison MargielaやJIL SANDERだったり。
そういうブランドのショールームに初めて行った時の記憶も、もちろんすごく残ってるんですけど、コロナ後に訪れたニューヨークが自分の中ではすごく印象的でしたね。
前職で小さな業態のバイイングを任された時に、ニューヨークで一人で制作しているデザイナーさんのアトリエにバイイングに行ったり。
迫村 インディペンデントなブランドだね。
岡本 そうですね、インディペンデントなブランドに直接連絡して会いに行くことをやっていた時がすごく楽しくて。
これからっていうブランドを探したり、デザイナーさんと直接カフェで話して商談したり、そういうのをニューヨークでは経験できました。
迫村:またニューヨーク行きたい?
岡本:そうですね。また行ってみたいです。
ニューヨーク以外でもインディペンデントなブランドをじっくり探したいなと思います。

迫村 少し話は変わりますが。岡本さんはどういうカルチャーを持っているの?
例えば趣味とか。
岡本 カルチャー、、、と言われるとそんな大それたものは持ってないと思います。
印象にずっとあることは、小学6年の時にどっぷりレオナルド・ディカプリオにはまって「ギルバート・ブレイク」を観て。
それから「ロミオとジュリエット」や「マイルーム」だったり、初めてファンレターも書いたりして。
それから海外雑誌を切り抜いたりして、そこで見る1990年代や2000年代の海外俳優の飾らない着こなしは今でも刺激を受けるくらいずっと好きですね。
もう一つ。自分が好きな世界観でいうと、パリの街ですかね。
初めてにパリに行った時に、パリの街の情景、そこにいる人たちの着こなしに衝撃を受けました。
日本とは着る文化が全然違うから、とても自然体だし「引き算する美学」がすごくいいなって思って。
自分がいいなって思うのは、パリにいるそういう女性像だったりしますね。
迫村 もう少し具体的に言うと、どんな着こなしをしている人に目がいってしまう?
岡本 具体的にいうと、パリの人ではないけれどキャロリン・べセット=ケネディさんがずっと好きですね。
ジョン・F・ケネディ・ジュニアの奥さん。
すごい情報が表に出ている人じゃないですが、ベーシックなもの選びなのに洋服の着こなしにその人自身の意志や思想が現れている感じが伝わってきて。
迫村 その魅力はシンプルな感じの着こなし?
岡本 そうですね、ラフで。
シンプルに見えて、一見こだわってなさそうだけど実は内側で物凄く拘っている感じがするような。

迫村 岡本さんもいつもシンプルに、さらっと着ているイメージがあるよね。
迫村 また話は変わるけど、BIOTOPに入る前は半年くらい放浪してた?
岡本 半年じゃないですよ 笑 2ヵ月半ですね 笑
迫村 2ヵ月半か 笑 世界中を廻っていたの?
岡本 世界中 笑 世界中でなく、ヨーロッパ中を2ヵ月半で廻ってきました。
迫村 どこに行ったの?
岡本 8か国行きましたね。
ドイツとパリに友人がいたりしたんですけど、コペンハーゲン・フィンランド・ウィーン・プラハ・イタリア・オランダ・ドイツ・フランスに行って。
迫村 仕事とは違う時間で、そこまでの長い期間で旅行に行くのはおそらく人生で初めてだと思うけど、
やっぱり行ってなんかしら変わるもの?
自分の考え方とか価値観など。何か発見とか刺激受けたこととかある?
岡本 すごい発見があって自分が全て変わるなんてことはないんですけど。
その国の特徴というか根付いているものって、美術館に行くとか観光名所に行くというよりただローカルな場所を散歩したり、
その土地の知らないカフェに行ってみた方が感じ取れたりするんだなって改めて思いました。
街を歩いてる人とかを見てると、ヨーロッパの中でも国々でライフスタイルや、洋服の着方も全然違うんだなぁとか。
そういう感覚をじっくり感じることができたことは面白かったですね。
特にドイツは印象的で。
迫村 ドイツはベルリン?
岡本 はい、ベルリンはとても刺激がありました。パリはもちろん好きですけど。
ベルリンは全部で半月くらい居たので、毎週末マーケットに行ってたんですけど、
小さい子から学生、おじいちゃん、おばあちゃん、みんなマーケットに来ていて。ものすごくエネルギーを感じました。
洋服の着こなしもとても自由でマーケットで買ったヴィンテージものとかを上手に取り入れているのを見たり、
マーケットが生活の一部で人から人への流れを大切にしていることを感じたり。
ファッションが自分軸でしっかり確立されているのを一番感じた場所かもしれません。
迫村 ドイツはいろんな人種の人が入ってきた時代から2世3世ってなっていて、カルチャーも入り混じっていて面白いよね。
一方でクラシックなドイツも良さがあるけどね。
岡本 ムードがあっていいですよね。

迫村 放浪中、そろそろ社会復帰っていうタイミングで、「BIOTOPどうですか?」って話が来たと思うけど 笑
BIOTOP入ってもらった当初は、僕がバイイングしたものが店頭にあって、その次のデリバリーも控えていた時だったよね。
そのデリバリーを調整してもらいながら、岡本さんのバイイングに変えていく中でBIOTOPに感じることあった?
岡本 もちろんBIOTOPは知っていたので、なんとなく想像していたことはあったんですが。
言葉にするのは難しいですが、「いい意味で力が抜けてる感じ」が第一印象ですね。
ファッションだけを求めるっていうよりは「ファッションは生活の一部だよ」っていうお店作りをしているし、
あと迫村さんも自分が好きなものに対して一貫してるじゃないですか。
だから、もちろん新しいものがある場所にもなっているけど、
しっかりとスタイルがある人のクローゼットになっているなってお店を見た時に思いました。
それと、この規模でやっていながらも小さな個店を演出していくみたいな価値観と心地よさが稀有な存在のお店だなと。
迫村 ファッションに対してとか仕事に対して、自分で新たな表現をしていく場としてはフィットしそうな感じはあった?
岡本 そうだろうなと想像して入社したのもありましたが、それはとても感じています。
迫村 実際こう仕事が始まって、岡本さんがバイイングしたブランドが少しずつ増えたりとかしていく中で、自分が意識していることとかお客様に伝えていきたいこととかある?
岡本 繰り返しになってしまいますが、常に変わるっていうことではなくて、
クローゼットにちゃんと永く残ってもらえるような服を届けたいなっていうのと、
自分もそういう価値観で物を選びたいっていうのがありますね。
でも、一方でファッションってその時々のムードだったり、特に女性は新鮮さとか楽しさは必要な部分があるので、
そういうエッセンスはちゃんとタイミングで伝えながら、スタイルの軸が作れていくような提案をしたいっていうのは思ってますし、
それがBIOTOPらしさになればいいなと。
迫村 今はもう岡本さんがレディースを全てやってくれているから、基本的には全部おすすめですってなってしまうと思うけど、
今シーズンのバイイングで特におすすめですとか、新しい挑戦ですとかあったりする?
岡本 もちろん、全てがおすすめですが、例えばTHE ROWは自分の中では日本で取り扱われているイメージが少しコンサバティブで。
お客様のニーズに応えて取り扱いされてるなっていうのも感じるんですけど、
私が思うTHE ROWはもっとカジュアルに着てもらいたい日常着なんです。
着てクタクタになってこそかっこいい洋服であって、そのためのあのクオリティを楽しんで欲しいなと。
選び方の目線も日常でカジュアルに着られるアイテムや、ちょっと遊び心のあるアイテムを選びたいと思ってて。

迫村 そうだよね、僕もすごい思う。
岡本 BIOTOPにはそういうものを求められているお客様も来られているなっていうのを感じるので。
あとはパリ拠点の女性がやっているBAMBOO ROGER KWONGとか、アクセサリーのRomieobjettiとかですね。
迫村 あの女性も、岡本さんが好きそうなパリジャンって感じだよね。
岡本 そうなんです、とってもチャーミングで素敵です。
デザイナー自身が、自分が着たいものを自然体に作っているところにすごく共感するんです。
着飾るための服じゃないものを作っている方たちはセンス良くて、そういうブランドを意識してバイイングして、
BIOTOPで展開しているメゾンブランドとのミックスで提案するのが自分はいいなって思っています。

迫村 直近でいうと、Em Archivesの雰囲気とかもなんか岡本さんらしい取り組みだなって。
岡本 すごく楽しみにしていたイベントでしたね。
迫村 今後、漠然とこんなことしたいなとかありますか?
岡本 迫村さんと出張行くといろんなお店をみて回るじゃないですか。
それは別にファッションのお店じゃなくて、小さな雑貨屋さんとか飲食店とか。
私は大きいお店を作ることも好きなんですけど、やっぱり小さいところに気持ちが入っちゃうし、
細部まで自分のこだわりが詰まっているのがいいなって思うので、
BIOTOPの小さいレディース店とかキオスクみたいな小さいお店がやれたらいいなって。あとアクセサリーだけのお店とか。
今はもうセレクトショップはたくさんありますから。
ゆくゆくはちょっと変化球のある、今のファッションのサイクルとは別軸にあるお店や服の提案をしてみたいです。
迫村 そうだよね。個人店みたいな感じにするって、実は組織でやった時に一番難しいですよね。
でも、ジュンはある程度個人に任せて、チャレンジさせてくれる環境もあるので、
是非挑戦してみてください。
岡本:そうですね。チャレンジできる環境はとてもありがたいです!ありがとうございます。
岡本茉莉 Mari Okamoto
前職では店舗スタッフとしてキャリアをスタートし、現場で培った感性と確かな審美眼を武器にバイヤーへ。
売場づくりから商品選定まで幅広く経験を重ね、着実に実績を築く。
2025年1月、BIOTOPへ入社。
現在はレディースバイヤーとして、時代の空気を捉えながらも本質を大切にしたスタイル提案で活躍中。
豊富な現場経験に裏打ちされた視点とセレクトで、多くの支持を集めている。