BIOTOP PEOPLE

No.28 Jimmy Turrell Artist

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No.28 Jimmy Turrell Artist

最近では、ミュージシャンBeckのアルバムやツアーグッズのグラフィックが
話題となったアーティスト、ジミー・タレル。
ハンドメイドのコラージュやドローイング、ペインティング、スクリーンプリントなど
さまざまな手法を通して今のカルチャーをビジュアル表現するジミーが、
白金台のBIOTOPにてエキシビションを開催することになった。
「Two Islands」をテーマに、日本とイギリスの相関性を描いたアートはとても刺激的。
そのユニークな作品の背景について、ディレクター迫村が話を聞いた。

イギリス北東部のニューカッスルで創作活動を続けるジミー・タレル。雑誌や新聞をはじめ、イギリスのブックメーカーの老舗Ladbrokes社やイタリアのフィアット社などの広告キャンペーン、またイングリッシュ・ナショナルオペラの広告映像など、活躍は多岐にわたる。

迫村(以下S) 今回のエキシビションのために、素晴らしい作品をたくさん仕上げてくださって、ありがとうございます。僕はBeckのアルバム「Colors」のアートワークを見て感動して、ぜひ一緒に何かしたい!と思ったのですが、あのアルバムは世界的にヒットしたから、すごく反響があったでしょう?

Jimmy(以下J) ありました。あのあと音楽関係の仕事の依頼がたくさんきました。ほとんど断ってしまいましたが。本当に好きなミュージシャンじゃないと仕事ができないんです。

ジミーがアートワークを手がけたBeckのニューアルバム「COLORS」。今回のエキシビションでは、この原画も展示される。

S ジミーにオファーしたとき、絶対断られると思っていました。まさか受けてくれるとは思わなかったので、本当にうれしかった。

J BIOTOPでエキシビションをやるというのは、自分にとってすごくいい経験になると思ったんです。自由に発想して自由に作品を作ることができて、僕も楽しかったです。

S ジミーのアートワークは意外な要素を組み合わせるコラージュなど、とてもユニーク。学生時代からこういった作品を作っていたのですか?

J 大学ではグラフィックを専攻していて、その頃から音楽などにインスパイアされて作品を作っていました。じつはデジタルがあまり得意はないので、切ったり貼ったりというアナログな手法のほうが自分らしく表現できるのです。だからコラージュが基本的なアートワークですね。

S では好きでやっていたことがいつしか仕事になったんですね。

J 卒業した後、グラフィックの仕事をしたくてあちこち売り込みにまわったところ、僕のアナログな作品を見た人が、グラフィックではなくイラストレーターとして仕事をしたらどうかと言ってくれました。それで最初は音楽雑誌や週刊誌などでイラストレーターのような感覚で、作品を寄せていました。それを見た人が新たなオファーをくれて、だんだんガーディアンとかNYタイムスなど大手の新聞社や出版社からも仕事が来るようになったんです。

S ジミーの故郷はニューカッスルですよね?どんな雰囲気のところなんですか?今の仕事をしようと思ったきっかけは、ニューカッスルと関係あるんですか?

J ニューカッスルはイギリス北東部にある工業都市。そのカルチャーの中心地でもあるバイカーウォールという町で育ちました。ジオメトリックでカラフルな建築が印象的で、その風景にはすごく影響を受けていると思います。父は消防士、母はエアロビクスの先生。まったく異なる職業の2人が両親ということも、僕のインスピレーションになっていますね。

今回の展示作品より。独特のグラフィックと色使いは、ぜひ会場にてオリジナル作品で確かめてほしい。

S 現在、ロンドンで制作活動をしているのですか?

J ロンドンには13年間住んでいましたが、今はニューカッスルに戻りました。Beckのアルバムの仕事をした後、ロンドンじゃなくても仕事はできるんじゃないかと感じた。それで久しぶりに地元に帰ったら、工場が減って、逆にギャラリーやショップが増えてカルチャー色が強くなっていました。とてもリラックスして生活できますね。ロンドンは月に2、3回行くけれど、行くたびに新しいスポットができていて、たえず変化する面白い街だなと思います。どちらもインスピレーションに溢れていますね。

S 日本にいらしたことはあるのですか?

J 一度、京都と大阪へ行きました。僕にとっては、日本へ行くというのは、月に行くのと同じくらい未知なる冒険だったんですが、とても刺激的でした。スタイリッシュだし、建物は美しいし、街はクリーンだし、人は優しい。京都の自然は素晴らしく、大阪は活気があって、マンチェスターっぽいなと思った。日本とイギリスは似ている部分がたくさんあるとそのとき気づきました。

S では東京は今回が初めてになりますね。行きたいところはありますか?

J 渋谷とか、古い下町とか、おしゃれなファッションストリートとか。街を離れて富士山にも行ってみたいですね。

膨大な量の古本や古雑誌を収集していて、そこからさまざまなビジュアルをピックアップし、再構築してコラージュを完成させる。コラージュは何層にも重なったコラージュの上に、さらにテクスチャーや色ものせて仕上げていくという。

S 今回、BIOTOPで開催されるエキシビションのテーマは“ Two Islands ” 。日本とイギリスの相違点や共通点をジミーの視点で表現するわけですが、日本のことをものすごく勉強しているので驚きました。僕たちも知らないような名前やワードがたくさん出てきていています。

J もともと日本のミニマリズムやモダニズムはすごく好き。同時に伝統的なカルチャーにもとても惹かれています。だからこの機会に日本の映画や音楽、歴史、建築、ファッションなどについて、あらためてリサーチしました。これらのキーワードからは2つの島をつなぐ共通点がたくさん見つかりました。

S どちらも島国で、皇室と王室があり、ポップカルチャーが盛んというところも似ていますよね。

J そうですね。2つの国はとても似ていて親和性が高く、長い歴史の中でさまざまな関わりがありました。日本のシンセサイザーはブリティッシュのニューウェーブに刺激を与えたし、山本寛斎、アレキサンダー・マックイーン、川久保玲、J.W.アンダーソン……と、ファッションは互いにいい影響を与え合ってきました。着物がイギリスのファッションに与えたインスピレーションも計り知れないし、日本のロリータファッションは「不思議の国のアリス」やヴィヴィアン・ウエストウッドの系譜を感じます。イギリス文学は、多くの日本のマンガやアニメの題材になっていたりもしますね。そういえば江戸時代初期にイギリス人のウイリアム・アダムスが日本で暮らし、やがて三浦按針という日本名を与えられた話も、とても興味深いです。

S たしかに日本人から見ても、イギリスのカルチャーには親近感を覚えますね。それらのインスピレーションをコラージュで表現するわけですが、いつもどのように色やレイアウトなどを考えるのでしょう?

J 基本的には偶然の産物です。具体的にアイデアがあるときもありますが、たまたま間違って置いたら、すごくいい感じになったということもあります。大事なのは、その作品で自分が何を表現したいかということ。主張したいテーマのビジュアルを同時に置いてみたら、思ってもみなかったものが生まれたりします。だからほぼ偶然といっていいと思います。

S 今回、初めて日本で開催するエキシビションなわけですが、みどころは?

J “Two Islands”というテーマと、Beckのアルバムのアートワークの両方を展示しますが、“Two Islands”は自由に考えた挑戦的なテーマで、Beckのほうはとてもコマーシャルな仕事。その違いも楽しんでほしいですね。あとこのエキシビションに展示する作品の制作過程をまとめた、大きな本も展示しますので、それもぜひ手に取ってほしいです。

S ジミーの今後の活動もとても楽しみですが、これから挑戦したいことってありますか?

J 新しい分野、たとえば彫刻やアニメーションなど、いろいろなことに挑戦してみたいです。Beckほど有名じゃなくても、本当に自分が好きなミュージシャンとも仕事をしたい。これからもっと自由に、新しいものを作り続けていきたいです。

S ますます楽しみです。初めての東京がどんなインスピレーションを生むのかも見逃せないですね!

Jimmy Turrell Exhibition “ Two Islands ”
何世紀にもわたって互いに影響と刺激をあたえあってきた2つの島=イギリスと日本。その音楽、ファッション、映画、デザイン、建築、歴史をイギリス人アーティストのジミー・タレルが探求し、共通点や相違点をコラージュで表現した作品を展示します。オリジナル作品の展示、販売と同時に、Tシャツやポスターも発売します。また話題を呼んだBeckのアルバム「COLORS」の原画や、彼が空間に施したペインティングなど見どころたっぷりのイベントです。

2018年10月5日(金)〜10月21日(日) @BIOTOP

今回のテーマ“ Two Islands ”は、2つの島国の過去と現在を、ジミーの感性を通して自在にワープする体験になりそうだ。

Composition/Ayumi Machida

Jimmy Turrell

イギリス、ニューカッスル生まれ。ロンドンのセントラル・セント・マーティン芸術大学を卒業後、グラフィックアーティスト、映像ディレクターとして活動。ハンドメイドのコラージュ、ドローイング、スクリーンプリントなどを得意としたユニークな作品は、雑誌、新聞、広告にたびたび登場し、ファッションやスポーツ、音楽業界からも注目されてさまざまなコラボレーションを実践している。

Interview with

迫村 岳 (BIOTOP ディレクター)

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