BIOTOP PEOPLE

No.13
「言葉でうまく説明できないけれど、すごく気持ちいい服がある」
「独特の空気感を持った、不思議な魅力の服がある」…
最近、服好きの間で話題になっている、いまもっとも着たいブランドがCOMOLI。
何が人々を惹きつけるのか。デザイナーの小森さんにあって話を聞いたら、
その服のように心地いい空気感を持った、繊細な言葉があふれていた。

小森啓二郎

COMOLI デザイナー

迫村(以下S) 最初にCOMOLIの服を見せていただいたのは、2回目のコレクション、2012-13秋冬でした。見た瞬間にいいなと感じて、BIOTOPの空気感にもすごくあうと思いました。いまとても注目されているのは、きっと誰もがこういう洋服を探していたからではないでしょうか?

小森(以下C) 2012年春夏にスタートして、最初の頃はバイヤーさんでもスタイリストさんでも、仕事をきっかけにしてとにかく見にきてほしい、そして気に入ってくれたらいいなというスタンスでした。あるバイヤーさんは自分用に1着買って、個人的に好きだけどあまり売れないんじゃないかな、と言いながら店頭に1着出したら意外と反応あったので、もう1着、次は2着…とどんどん増やしてくれた。そんな感じで少しずつ広まっていったんです。

S クリエーションの根本は、最初からずっと変わらないですね。

C そうですね、シーズンごとにコンセプトが変わることもないですし、基本的に自分が思い描くシーンにあう服、いつどこで着るかという明確な目的のある服を作りたいので、ぼくのライフスタイルが変わらない限り、作るものは変わらないと思います。

サファリシャツ ¥29,000、リネンウール2タックパンツ¥32,000、裏毛半袖スウェット ¥13,000

S 以前、初めて食事に行っていろいろ話したときに、「服作りで一番大事にしていることは何ですか?」と聞いたら、「着ている人と服の間にある空気感」とおっしゃったのがすごく印象的でした。COMOLIは生地を厳選していて、フィッティングはいいし、ディテールも散りばめられていて、いったいどんなマニアックなこだわりがあるのだろうと思っていたので、意外な答えでした。

C 若いときは海外の展示会に行って、コレクションブランドとかに影響されたりもしたのですが、いつまでも欧米の服に憧れ続けているのはどうなんだろう、いいかげんそこから一歩踏み出さないといけないんじゃないか…と30歳半ばを過ぎて思い始めたんです。できるだけ自分のフィルターを通して、自分が住んでいる街で、自分の身の回りの人が日常的に着る服が作りたい。日本の気温と湿度、日本人の体型、そしてよく知っている日本の街並にあうような服。夏に汗をかいてもすぐ乾くよう通気性があって、タイト過ぎずに心地良く風をはらむような。平坦な体型にもなじむ、いわば筒をまとうような感覚。それが日本人にとって着心地がいい服なんじゃないかと思ったんです。

S 確かに着たときの空気感がいいですよね。ショップのラックに服を吊るしてみても、ふわっと空気をはらんだ佇まいが美しく、つい袖を通してみたくなる。軽い素材なのに独特の立体感があって、いい意味で「素朴」という言葉が似合う服なんです。

C じっさい肌に触れる面積は少ないほうがいいと思っています。肌に貼りつかず、肌との微妙な距離を保ちたい。包まれている感じにしたいんです。あと、海外に行ったときにすごく思うんですが、どんなシチュエーションでもそれ1着で補えるような服が理想なんです。高級ブランドのブティックでも浮かず、ダウンタウンでは目立たず自分を守ってくれる。野暮ったくもあり上品でもあり、あらゆるシーンに対応できる服を、ハイテクな素材やパーツを使わずに実現したいと思っています。

(左) マッキーノ型コート ¥68,000、リネンウール2タックパンツ ¥32,000、裏毛半袖スウェット ¥13,000、16Gコットンシルク半袖ニット¥22,000(BIOTOPで取扱なし)
(右) リネンウールWブレストジャケット ¥54,000、リネンウール2タックパンツ¥32,000、バンドカラーシャツ ¥22,000

S ショップで見ていると、COMOLIの服を買ってくださるのが、ポパイを読んでいそうな若い方から、落ち着いた50代くらいの方までと幅広い。デザイナーズブランドが好きな方も、テーラリングにうるさい方も、皆いいねと言ってくださるんです。どんな人が着ても自分らしくいられるブランドなんですね。どのようにしていまの服作りに行き着いたのですか?

C もともと企業でデザイナーをしていたので、ずっと売れる物作りをしてきました。ただ売るために機能やテクニックを強調することには疑問を感じていた。オンラインショップが一般的になりつつあった2000年代前半には、サイトで見て買いやすいよう、世の中的にわかりやすいデザインとハイスペックが優先されているように見えました。売れることは大事ですが、テクニックやスペックばかりを誇示すると本末転倒です。人がいつ、どこで、どんなシーンで着るのか。その目的を達成するためにこういう機能とスペックが必要だ、という順序で考えるのが服の本来あるべき姿だと思い、ブランドを立ち上げました。

S あくまでも着る人の感覚を優先するんですね。

C たとえば3月頭くらい、駅から会社まで歩くシーン。10℃ちょっとの気温だけど、季節はもう春だからウールじゃなくコットンのコートにしよう…そこから始めて、そのシーンをいろいろ想像してスペックをそろえていく。そうしたら結果的に美しいものができた、というのが理想ですね。着心地がいいとか、美しいとか、わかりやすいほうがいい。

S やはり素材がすごく重要だと思うのですが、どうやって選んでいるんですか?

C 長い間、会社でデザイナーをやってきたので、その経験から素材に関してはかなりの経験を積んでいます。こういう重さ・肌触りという感触を思い描き、たくさんの記憶の中から使いたい生地のイメージを引っ張り出して、それを糸の番手など数字も交えて、具体的に生地屋さんに発注します。たくさん見て触ってきたからイメージの蓄えはありますが、もっと増やしていきたいので、海外でも国内でも、行ったことのない場所に積極的に行くようにしています。初めて感じる空気感を素材に落とし込みたいんです。

リネンウールWブレストジャケット ¥54,000、リネンウール2タックパンツ ¥32,000、コモリシャツ ¥22,000

S 映画とかアートなどからインスピレーションを受けて服を作るタイプの人もいますが、小森さんはただ単純に服が好きで、服のことばかり考えて作っているという気がします。

C 確かに服のことばかり考えていますね。学校を卒業してからずっと服を作る現場にいるので、服について考えることが自分のライフスタイルになっています。毎日の生活の中で「こういうとき、こういう服があったらいいな」という肌感覚を、つぎつぎ形にしていく。だからずっとオンともいえるけど、ずっとオフともいえる。

S トレンドはあまり意識しない?

C いや、意外と気にしてるんですよ。東京のど真ん中で、トレンドの中心に身を置いて自分の立ち位置を決めるというか。マニアックともポップとも評されたくないし、「〜系」とか言われたくないので、トレンドを意識しつつ、そこから一定の距離を保てるよう、常に自分らしさを模索しています。

S たしかに言葉で説明できない部分に、「らしさ」があると思います。

C BIOTOPは大胆にシンプルなことをやっているのがすごい。潔いと思います。空間や商品構成にも余裕を感じるし、ショップスタッフも空間もグリーンも美しい。コンセプトが明確です。

S そう言っていただけてうれしいです。でもぼくも自分の感覚で選んでいますね。服好きな人だったら、この隣にこれが着たらうれしいだろうなとか。ショップで買い物しながらクリーンで爽やかな気持ちになってもらえたらいいなとか。いい意味でミーハーな感じがいいかと。スタッフ一同、お客様がショップにいらしたときに感じる空気感をもっとも大事にしていて、そこだけはブレないようにしています。

C ショップも服も、空気感を大切にしたいですよね。

(左) タイプライタードローストリングパンツ ¥28,000、7G コットンボートネックニット ¥32,000
(右) タイプライター 3Bジャケット ¥34,000、ベルテッドチノパンツ¥28,000、裏毛半袖スウェット ¥13,000

Composition/Ayumi Machida

COMOLI

デザイナー小森啓二郎が2011年設立したブランド。「すべての洋服の原型は欧米から生まれ、ある目的の為に作られた物である」という基本概念のもと、卓越した職人たちの素材、縫製、パターンを取り入れながら、日本の気候と日本人の体型にあう、上質でシンプルな日常着を提案する。

BIOTOP PEOPLE are…

BIOTOPに集まる、ファッション、ビューティ、フード、グリーン、カルチャー…それぞれのジャンルでスペシャリティを持ったクリエーターたち。
彼らのクリエーションの秘密や、いま感じていることに、BIOTOPのディレクター、バイヤーがアプローチします。

Interview with

迫村 岳
(BIOTOP ディレクター)

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