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BIOTOP PEOPLE

No.52 Emma Songeon

Emma Songeon
BIOTOP PEOPLE No.52 Emma Songeon 「Em Archives」owner
パリの中でも静かでローカルな空気が残るビュット=ショーモン地区に位置する
「Em Archives」のオーナー・Emma Songeon氏。
ヴィンテージの服に宿る歴史を愛し、”自分らしい美しさ”を追求する彼女が大切にするのは、
一着の服と対話をするような贅沢な時間と体験。
自然体でありながら芯の通った彼女の、審美眼とライフスタイルに宿る静かな情熱を紐解くため、お話を伺った。

岡本 日本で初となるポップアップを開催していただきありがとうございました。エマさんの提案するスタイルを愛し、共感しているお客様が想像以上にたくさん足を運んでくださって、皆さんの喜ぶ姿がとても印象的でしたが、いかがでしたか?

Emma たくさんのお客様が足を運んでくださり、お客様からいただいた反響や温かい言葉に心から感謝しています。Em Archivesに興味を持って頂いていたお客様とBIOTOPのお客様が、この空間で自然に混ざり合っていたことが特に印象的で本当に嬉しかったです。
パリ以外でのポップアップは初めての試みで少し不安もありましたが、BIOTOPチームの献身的なサポートのおかげで最高のスタートが切ることができました。

岡本 会場の設営が終わって思わず私も感激してしまって、すごく嬉しい瞬間だったのを覚えています。
初めてBIOTOPを訪れてみて印象はどうでしたか?

Emma 写真で見ていた以上に素敵なお店で、嬉しいサプライズでした。空間のキュレーションもすごく好きで、単に物を並べるだけではなく“ライフスタイルそのもの”を提案しているような感覚があるなと思いました。レストランを含めた建築や空間全体の雰囲気、それに古い家具と新しい家具がミックスされている表情もすごく魅力的で。私が東京に住んでいたら間違いなく通い詰めている場所ですね。

岡本 ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。
日本は2回目とのことですが、今回の旅で一番印象に残っていることはありますか?

Emma 難しい質問ですね、どれも素晴らしい経験だったので。 笑
でも日本で一番心に響いたのは、“自然の存在の近さ”かもしれないです。もちろん地方の自然も素晴らしいですが、都市の中にも静かに自然がしっかり息づいていて、それがとても魅力的に感じました。九州での温泉や、阿蘇山を訪れた時の景色、海辺で過ごした時間、そういう経験を通して自然との深いつながりを再確認できたことが大きな収穫でした。

岡本 エマさんのInstagramで自然の中にいる様子を見て、都会的なイメージを持っていたのでそのギャップがとても新鮮でした。

Emma 私も二つの側面があるんです。都会での美術館巡りやショッピング、レストランでの食事も都市ならではのライフスタイルですごく惹かれますし、大好きです。でも一番自分らしくいられて心が満たされるのは、やはり自然の中にいる時ですね。

岡本 とっても共感します。東京での一週間もゆっくり楽しめたようでしたが、お気に入りの場所や物は見つかりましたか?

Emma 前回東京に来たときはあまり時間がなかったので、今回は1週間しっかり過ごせて本当にうれしかったです。美術館もいくつか訪れていて、その中でも庭園美術館は以前からずっと行ってみたかった場所の一つで、本当に素晴らしく美しくて印象に残っています。東京都写真美術館では、日本人写真家による様々な風景写真の展示や、中にはシュルレアリスム的な表現をしている写真家もいてとても刺激を受けました。パリでは日本人写真家の展示はあまり見かけないので、今回こうして触れられたことがすごく新鮮で、私自身写真という表現媒体がもともと好きなのでとても有意義な体験でした。

岡本 エマさんが写真美術館に行っているのをInstagramで見て、私もすぐ気になっちゃいました。 笑

Emma 東京だと他にも印象に残っていることがあって、それは“ただ街を歩くこと”。
静かな住宅街を散策したり、丁寧に手入れされた庭を眺めたり、ふとした場所で神社を見つけては訪れてみたり。都会の中でも静かで穏やかな場所が点在しているのが本当に魅力的で、その感覚をとても気に入っています。
それから素敵なアンティークショップも見つけて、素晴らしい日本のアンティーク衣服に出会い、いくつか購入しました。特別なものが見つかってすごく嬉しかったです。

岡本 かわいいヘアピンも買ってましたね!私もただ街を散策することが大好きなのでとてもわかります。日本人がパリで街並みやアンティークショップを巡るときに感じるトキメキと、どこか似ているのかもしれません…。

Emma フランスと日本の間には、文化や歴史に対する深い相互敬意がありますよね。今回の旅の中で明治神宮に行った際にも、天皇が西洋に興味を持っていて、1920年頃にフランスと日本の関係が本格的に始まったって書いてある歴史的観点の文章を目にしたし、美術館でもフランスと日本がどのようにして文化交流をしてきたのかを学ぶことができてとても感銘を受けました。

岡本 深い関係性がそのころから作られてきてたのですね…。
東京でもいい時間を過ごせてよかったです。

Emma ほんとうによかった。毎年来たいくらい。笑

岡本 ぜひぜひ! 笑

岡本 では次にエマさんのお店のことを。
初めてパリでお会いした際に、Emmaさんが以前弁護士をしていたと聞いて、その経歴がすごく面白いなと思いました。そのお仕事をされながら今の「Em Archives」に至るまでに、どんな経緯や変化があったのでしょうか?何をきっかけにお店をスタートしたんですか?

Emma それはかなり長い話になりますよ。笑
ヴィンテージの販売を始めたきっかけは2つあって。一つは、両親が若い頃からヴィンテージアイテムを集めていた影響で、私自身も10代の頃からヴィンテージならではのスタイルに惹かれて興味を持ったこと。それから、法学専攻の大学に行くためにマルセイユからパリに移って、経済的にもヴィンテージやセカンドハンドの服を多く着るようになったんです。その時ちょうどファストファッションが流行っていて、環境や社会に与える影響を目の当たりにしたことで、新しいものを買うというよりもセカンドハンドだけを着るようにしようと思ったのがもう一つのきっかけです。

パリにはヴィンテージや中古品を扱うお店がたくさんあって、当時はヴィンテージに興味を持っていた人たちはいたけど、時間がなかったり自分に合うものが見つからなかったり…。そこで在学中に少しでもお金を稼ぐためにInstagramのアカウントで毎月少しずつヴィンテージアイテムの販売を始めてみたんです。
でも卒業後は就職して時間が取れなくなって販売は中断。でもいつか自分のお店を持ちたいという夢がずっと心の隅にあって…。そんな中、世の中はコロナ禍になって誰しもが自分たちの人生について考え直していた時期に、勤めていた弁護士事務所の契約が終わり、そのタイミングでやっぱり自分のやりたいことをやりたいと思い、自分のビジネスを始めることにしました。とりあえずやってみてうまくいけばそれでいいし、うまくいかなかったらまた弁護士に戻ればいいと思って。それでお店の名前も「Em Archives」に。

ただ最初の2年間は、オンラインを中心に営業をしていました。資金がほとんどなかったので、自宅で仕事をしながらパリでシーズンに一回ポップアップストアを開催したり。そしたらその2年間でヴィンテージに対するポジティブなフィードバックが多くて、自信を持つことができたんです。

それでお店の場所を探し始めました。賑やかな観光地のようなエリアからは少し外れた場所がいいと思って、いくつか物件を見て回ったあとにようやく理想的な場所を見つけました。かなり手直しが必要でしたけど素敵なポイントがたくさんあって、公園が近いのも決め手でした。お客様がお店に来て、そのあと公園を散歩できるのが魅力的だったんです。BIOTOPと似てますよね。笑
それでその物件を借りてリフォームをして、3年が経ちます。

岡本 確かに、その心地よい時間の流れはBIOTOPも大切にしているので通じているような気がします。

Emma そう、そこがBIOTOPの素晴らしいところで、今回のコラボレーションも似たような視点から生まれたものだと感じてます。

岡本 エマさんが選ぶお洋服は、90年代のミニマルなムードが漂っていて、わたしもそのラインが大好きです。お洋服を選ぶ基準になるスタイルの影響はどこから受けたんですか?ご両親がそういうスタイルが好きだったとか?

Emma 10代の頃にヴィンテージに出会って以来オタク気質なんです。笑 90年代のものって今でも状態の良いものが多くて、それで古いヴィンテージアイテムを厳選して取り扱ってるオンラインショップから情報を集めたり、興味のあるデザイナーやファッションの歴史についてもよく調べていたので、リサーチや歴史的背景が私のセンスを作るうえで役立っている気がします。
それからジルサンダーやカルバンクラインのような、エレガントでありながらも日常着として着心地のいいスタイルをもつデザイナーたちからインスピレーションを得ていますね。最近のファッションの多くは独創的過ぎたり目立ちすぎているように感じていて、私はもう少し控えめで落ち着いていて、かつ美しいもののほうが好みです。

「Em Archives」で私が選ぶアイテムの面白いところは、様々な要素をミックスできる点だと思います。基本的には“Old Romance”を軸にセレクトしているんですが、もう少し古い年代のピースを織り交ぜるのも好きなんです。
ヴィンテージの魅力って、古い服になればなるほど希少性も高くなるし、それだけ特別な存在になるので、長い時間を経てたくさんの人に愛されながら受け継がれてきた服を身に着けること自体にすごく価値があるように思うんです。
それと同時に、今でも本当に質の良い服を作っているブランドはたくさんあると思うので、キュレーションには最近のデザインや新しいコレクションのものもあります。私自身、惹かれるのは“クオリティが高くて美しいもの”なので、年代だけで線引きする感覚はなくて、古いものと現代のものを自由に調和させるのが好きなんですよね。「Em Archives」はそういう自分自身のワードローブの感覚をそのまま反映させたものでもあると思っています。

岡本 お店も本当にエマさんのお家を訪ねるような感覚ですよね。ちょっと緊張感があるけど、穏やかな時間が流れてる。お店作り全体で考えていることや大切にしていることはありますか?

Emma この空間が、お客様にとって心地よく過ごせる場所であってほしいと思っていて、その場所で過ごす“体験”をより大切にしています。
お店自体も、いわゆる商業エリアから少し離れた場所にあるんですよね。近所に住んでいるお客様もいるけれど、わざわざこの場所まで足を運んでくださる方も多くて。だからこそ、来てくれた人には良い時間を過ごしてほしいんです。それに私は、自分の仕事やセレクトしている服に情熱を持っているので、ただお客様と会話をするのも大好きなんです。

それに服選びは、多くの人にとって“自分自身を表現すること”だと思うんですよね。だから焦らずにゆっくり時間をかけて、その服が自分にどう馴染むかを感じてほしいし、“買わなきゃいけない”というプレッシャーは全然必要なく、実際に永く着てくれる服を選んでくれることが一番嬉しい。クローゼットの奥で眠るのではなくて、“本当に好きで選ばれた服”であってほしい。

岡本 その“ゆっくりじっくり”選ぶ時間こそが、すごく贅沢な時間と体験につながっているんですね。日本にはまだそういったお店が少ないように感じるのですごくいいなと思います。

岡本 話は変わりますが、今回「Em Archives」同様、アーティストのSharlen Nozawa(シャーレン・ノザワ)さんの作品も並んでいて、ご本人がお店にも遊びに来てくれたりと、とても素敵な時間でしたよね。シャーレンさんの作品はどういったところに惹かれてセレクトをスタートしたのですか?

Emma 彼女とは共通の友人を通じて出会いました。最初に会ったとき、まず彼女自身の人柄、すごくユニークで、優しくて…なんというか持っている空気感そのものに惹かれて。
それから彼女の作品を知って、夢中になりました。当時はまだすごく若いアーティストだったんですけど、自分自身で釉薬の開発をしていて、それが本当に素敵で。特にいくつかの作品には、うまく言葉にできないけれど、強く“惹きつけられる感覚”があったんです。それで、お店に彼女の作品を置いたら、服やジュエリーともすごく美しく調和して、空間に少し“住まい”のような感覚というか、より温度のある雰囲気を加えてくれる気がしたんです。私が思い描いていた世界観を自然に補完してくれるような存在というか。
最初は一緒にポップアップを開催したんですけど、お客さまからの反応も本当に良くて。その後からは常設で取り扱うことを決めました。

お店に置く作品選びは、彼女が制作途中のものを見せてくれて、その中から私自身が心から惹かれるピースや釉薬を選んでいく、という形で一緒に進めています。彼女が今取り組んでいるものに合わせて、少しずつ届けてもらう感じですね。でも本当に、作品そのものだけじゃなくて、彼女自身のこともすごく好きなんです。Em Archivesでやっていることって、私にとってすごくパーソナルなことばかりなので。だからこそ、一緒に仕事をする相手との関係性や、ちゃんとした心のつながりみたいなものを、とても大事にしています。

岡本 とてもエマさんらしい誠実な考えですね。それをちゃんとシャーレンさんが具現化している。二人の関係性が現れてますね。

岡本 では最後に、エマさんのスタイルってこれからもきっと変わらないと思うんですけど、今後チャレンジしたいことは何かありますか?

Emma 今は、自分がいる場所にすごく心地よさを感じているんです。お店も、お客さまとの関係性も、毎週のルーティンも含めて。自分が本当に理想としていた形のビジネスを作れた感覚があって。それは、クリエイティブな意味でもすごく満たされる仕事でありながら、もちろんライフスタイルや経済的な面でも、ちゃんと成り立っているもの。同時に、旅をする時間だったり、仕事以外の大切な時間も持てるようなバランスを作れたことも、自分にとってすごく大きいです。そういう“仕事だけじゃない時間”って、私にはすごく大切なので。

ビジネスを始めて5年でこれからの成長を考えたとき、今思っているのは、次のステップとしてもう少し広い店舗を持てたら素敵かもしれない、と思っています。自分が本当に好きなブランドやヴィンテージを、もっと幅広く紹介できるような空間。
今のお店はすごく気に入っているんですけど、やっぱりスペースが限られているので、できることにも自然と制限があるんですよね。だからもし、同じエリアで“ここだ”と思える理想的な場所に出会えたら、次の展開として挑戦してみたい気持ちはあります。
もう少しライフスタイル全体を感じられるようなお店にできたらいいなって。BIOTOPほど大きくはないけれど、服だけじゃなく、その周りにある空気感や暮らしも含めて提案できるような空間。
でも、本当に大事にしたいのは“焦らないこと”なんです。私は何事も急いで決めるタイプではないので。
だから、それはあくまで“正しいタイミング”や“本当に良い機会”が訪れた時にだけ、自然に進めたいと思っています。

岡本 すごい今のエマさんらしくて素敵ですし、とてもバランスが取れていていいですね、すごくいい働き方、、、いつかそんな新しい空間にお邪魔できるのを楽しみにしています。

【Emma’s Favorite Spots in Paris】

・Buttes snack bar (10 rue pradier, 75019 Paris)
ナチュラルワインと美味しい料理が楽しめる、クールでリラックスした空間です。

・Chez Michel (10 rue de belzunce, 75010 Paris)
フルコースのフレンチ。特別な記念日を祝いたい時にぴったりな場所です。

・Yory (1 rue de maubeuge, 75009 Paris)
韓国料理とフレンチの洗練されたフュージョンのランチがおすすめ。

エマ・ソンジョン
Emma Songeon

マルセイユ生まれ。「Em Archives 」オーナー。「Em Archives」は2020年に設立し、2022年に実店舗をオープン。1990年代のアイテムを中心に品質とシルエット、そして “今の気分” にフィットするかどうかを基準に、Emmaの編集的視点・自身のワードローブの感覚を反映し厳選された、時代を超えて愛されるピースの数々を展開。

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